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戦国合戦奇譚 霧の戦場 尾上晴紀

 いざ合戦に挑まんとする武将たちを突如包む紫の霧。霧が晴れた先には異なる時間、異なる場所から運ばれてきた好敵手が待ち受けている。
 元の世界に戻るには戦いに勝つしかない。
 そんな設定の極端に戦術的なシミュレーション。非常にシンプルな構造ながら、大きな可能性が秘められていて、様々な組み合わせを想像するだけでも愉しい。政宗の言葉に従えば、異国の軍隊とも激突する可能性すらあらるわけで、夢がどこまでも広がっていく。英雄大戦シリーズを連想する設定ではあるが、強力なオリジナル主人公キャラがいない分、アクを感じずに愉しむことができる。

 とはいえ、描かれる歴史人物はアクの濃い人間が非常に多い。
 島津家久に始まって、上杉謙信や伊達政宗など戦バカの素敵な野郎どもに溢れている。中でも印象的だったのが、「ふひひ」笑いを絶やさない大内正綱である。史実の彼は良く知らないのに、ファンになってしまった……佐藤大輔氏の信長シリーズにおいて「フンッ」ばかり言っている佐々成政に通じるものがある。ふひひ。

 描かれる合戦は史上に有名なものばかりで、兵数も上杉軍以外は2万数千で揃っている。川中島の上杉軍だけは1万3千で比較的少ない。代わりに車懸かりの陣を「あえて」再現してみせていた。謙信に対して(目がイっている)なんて感想を戦国時代の人間が抱くのは如何なものかと思ったが、政宗ならギリギリOKかな。常にギリギリOKなところしか狙わないのが政宗だし。
 謙信もいきなり「ハレルヤ!」と奇声を発するなど凄まじく頭の痛い男に描かれていた。お前は細川半将軍かと――あれも童貞を通していたんだっけ。嫌な共通点だ。

 まぁ、ともかく楽しかった。ぜひ同じコンセプトの続きを読みたい。月山冨田城攻めの毛利軍と山崎合戦の秀吉軍(いちおう名目は信孝軍)、長篠合戦の織田軍とその敵は出てくる可能性が高いと示唆されている。場合によっては武田勝頼軍VS.武田信玄軍もありえるのかもしれない。混乱が大きすぎて戦いにならないだろうなぁ。

尾山晴紀作品感想記事一覧

戦国合戦奇譚 霧の戦場: battle field of mist (歴史群像新書)
戦国合戦奇譚 霧の戦場: battle field of mist (歴史群像新書)
タイトルは「戦場の霧」という有名な言葉のもじりと思われる
カテゴリ:時代・歴史小説 | 00:17 | comments(0) | trackbacks(0)

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