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星界の戦旗-宿命の調べ- 森岡浩之

 アブさんたちが次々と死んでいく。鹸のラストで由々しき事態と受け取っていたものの、ここまで壊滅的な損害を受けるとは予想していなかった。帝都ラクファカールは陥落し、新しい都も門をくぐったすぐ近くにあるわけで、最前線で生産や教育を行わなければならない。
 そのことにメリットがないわけでもなく、新兵器を非常に早いタイミングで投入できるはずだ。襲撃艦のような新顔がまとまった数で投入できれば奇襲効果がある。
 しかし、資源を集めることなど、問題も山積しているので、やはり予断は許されない。実際問題、アーヴが滅びてもなんらおかしくないんじゃないかな?

 皇帝や上皇たちの雄々しい戦いは滅びの美学を求めてのものではなく、後に繋げるためのものだった。完全に生き残りが不可能になった状態でアーヴたちが見せる反応が気になる。
 新しいアブリアルを建造して、誰も追ってこない宇宙の辺境に向けて旅立つかもしれないな。閉じた門を持っていけない点が痛い――急に開かれるかもしれないので――が、ハイド伯国を開国させたことで始まった戦争がアーヴがハイド伯国状態になることで決着するなら整った構図ではある。
 まぁ、戦争が決着するとしても、まだまだ先の話であろう。ラマージュ陛下たちがお隠れになった関係で、かなり性格の悪い――すなわち軍事的素質にあふれる――方々が頭角を現してきたわけで、アーヴがこのまま押し切られる心配はあまりない。
 もっとも、スポールは最後の弱小艦隊を率いることになっても愉しく戦うのだろうな。
 ラフィールは素直すぎるところがあるけれど、参謀長に然るべき性格の人間を配置すれば問題あるまい。 かくしてアーヴ伝統の司令官・参謀長漫才が演じられるのだ!

 反攻が上手く行っても四カ国連合に反撃を仕掛けて滅ぼすまでには相当の時間が必要と思われる。人類統合体の指揮官にセンスはないと思っていたが、竜の卵をほふった手管をみると、どうしてなかなか気の利いた奴がいる。まぁ、個人的感触では一割を占める人民主権星系連合体の人間が考えた戦術という気もするが。
 四カ国連合は単独の国家でないことで多様性を備えている点が、実はあなどれないのではないか。兵器の性能的には取るに足らないハニア連邦が参加したことが今の事態を引き起こしたのだから、銀河を股に掛ける時代になっても戦場の霧は深く、濃厚だ。つまりはそれこそが平面宇宙航法。

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星界の戦旗V: 宿命の調べ (ハヤカワ文庫JA)
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