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[図説]アメリカ先住民 戦いの歴史 クリス・マクナブ/増井志津代/角敦子

 ヨーロッパ人とアメリカ人の侵略にさらされたアメリカ先住民の戦いを5つの地域に分けて、豊富な図版をもちいて描き出す。広大なアメリカ大陸に住んでいた先住民がそれぞれ特徴的な文化・文明をもっていて、その特徴を活かしながら抵抗したことが伝わってくる。
 結局のところヨーロッパから持ち込まれた疫病の数々が、決定的な要因だったと感じられた。ただでさえ人口が減少したところに、近代的な農業に支えられた大量の人口で圧倒されてしまえば、抵抗にも限界がある。
 アメリカ先住民の持っていた病気がヨーロッパ人にダメージを与える逆のパターンが特に紹介されていないほど目立たないのも、人口の基礎が違うせいだろうか。

 兵器についていえば、小銃と馬に注目が集まっている。小銃は先住民にとって有効な武器であったが、弾薬を敵に依存する環境から最後まで脱することができなかった点が残念だ。ロシア相手に戦った北西海岸のトリンギット族は、他のヨーロッパ勢力から支援を受けていたようだが、こういう対立関係をもっと巧く活かせていれば・・・・・・だから、アメリカと単独で戦うのに近くなった南西部の部族は、イギリスやフランスが絡んでいた東海岸から平原の部族にくらべて弓に頼る面が強かったのだろうな。
 馬は銃よりは確保の余地が大きくて、入植者との戦力差を埋め合わせる方向に働いていた。いきなり品種改良が進んだ馬にぶつかることになったアステカやインカの帝国に比べれば恵まれている。

 戦術面では先住民が狩猟のテクニックを駆使して、ヨーロッパ人とはまったく異なる姿勢で戦いに挑んだことが良く分かる。先住民同士の戦いもヨーロッパ人とは思想を異にしている。
 巧みで地形をいかした襲撃と退却にボーア戦争を連想した。どちらも圧倒的な兵力の前に最終的には砕け散ったところも似ている。
 けっきょくは著者も指摘しているように先住民同士が手を結んで侵略者に抵抗できなかった点が痛い。そこをアピールして外交できれば侵略から距離を置いているヨーロッパ諸国から支援を得られたかもしれない。
 現実には先住民社会も多様であり、それまでの歴史もあって、最大の脅威を見抜くことができなかった。儀礼化した戦争で人口の減少を避けられていたものが、銃の流入によって、先住民同士の戦いにおける死者すら増える始末である。
 なんとも苦しい現実だが、それでも戦い抜いた多くの戦士が存在し、現在に至るも彼らの系譜は途絶えていない。それが良く分かった。

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図説アメリカ先住民 戦いの歴史
図説アメリカ先住民 戦いの歴史
 矢尻をわざと緩く結んで敵の体内でダメージを広げる手法は、戦国時代に武田軍が使った「ゆる矢」と同じだな。黒曜石の矢が当たると体内で破片が飛び散って、取り除けなくなるという話も怖かった。
カテゴリ:歴史 | 17:02 | comments(0) | trackbacks(0)

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