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中国古典兵法書・呉子 尾崎秀樹

 衛の人で、魯と魏と楚で功績を挙げた呉起の起こした兵法「呉子」を解説した本。日本語訳を最初に、書き下し文を後半にもってきていて、非常に読みやすい。蛇足と思える解説、実際の事例への言及など皆無で、呉子のエッセンスに触れることができたと感じた。

 少しだけ追加要素があるとすれば冒頭の解説であろうか。
 十批判書(邦訳名:中国古代の思想家たち)で、呉起が後5〜10年を楚の改革に使えていれば、秦の商鞅にも劣らぬ功績を挙げただろうという評価があることを紹介している。どちらにしろ、既得権益者の恨みを買って死ぬことは同じじゃないか!!
 法家の運命とは知りつつも同情を禁じ得ない。

 内容では「五度も勝ちつづけた国は、かえって禍いをまねき、四度勝利した国は疲弊し……」の一文を、項羽がどんな気分で思い出したかが気になった。兵法の勉強をした西楚覇王なら当然呉子にも触れているはず。
「一度勝っただけでその勢威を保持し得た国は、天下の統一者となれる」も劉邦みたいな戦い方を指しているとは思えないけどね。むしろ周の武王を意識しているイメージ。最初のチャンスで商を倒しても諸侯への示威が足りないから、あえて大兵力同士の激突になる牧野の戦いを行った、と呉子の発想では考えられる。

 他には楚の荘王のエピソードが出てきた点が興味深い。彼は蓋をあけてみれば本人が超強力なわりに人材が不足気味の覇者だったかもしれないな。優れた自己認識には敬服するし、荘王のエピソードを聞いて恥を感じられる武侯もそんなに無能な人物とは思えない。
 どんどん無茶になっていく呉子への設問には――そういうお話であると承知しつつも――苦笑してしまったが。
 堅固な大軍を五軍で打ち破る作戦は、非常に息があって有能な指揮官を五人も揃えないと各個撃破されるので、勝利の前提条件を整えることが大変困難だ。それでもちゃんと勝てる方法を提案しているところは流石は呉子と言わざるをえない。

関連書評
中国古典兵法書・三略 真鍋呉夫
「孫子・呉子」一日一話〜兵法に学ぶ組織の動かし方365 松本一男

呉子 (中公文庫BIBLIO)
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