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古代への情熱ーシュリーマン自伝ー シュリーマン・関楠生 訳

 ホメロスにあこがれてトロイアを発掘した考古学界の偉人。シェリーマンの人生と業績を描いた本。自伝と銘打ってあるが、自伝形式は前半だけである。古代への情熱とタイトルにあるが、日本独自のタイトルである(訳者は使いたくなかったが今までの流れで使わざるをえなかったらしい)。ついでに言えば著者もシェリーマンだけではなく、エルンスト・マイヤーの名前を入れておくことが適当であろう。
 素人から出発したシェリーマンの発掘よりもタイトルの方がツッコミどころが多い。そんな感じである。

 内容についてはシェリーマンの語学的才能に驚嘆せざるをえない。富豪への道を開いたのもロシア語の習得で、ギリシア語やアラビア語が発掘のために役立っている。
 特定の本を基礎にして、その言い回しを引用する形で話を組み立てる技法が得意なようだ。あとがきによれば家庭内の生活では半ば独自の言語を使っている状態になっているみたい。
 ともかく凄いし、純粋にあこがれる。

 考古学の方は基礎ができていないがゆえの問題があったみたいだけど、シェリーマン個人に関して言えば先入観がなかったことがプラスに働いた場合が多かったみたい。
 見目良い芸術品だけに注目せず、土器の破片や建築物に注意を傾けている点も好感が持てる。土器片は古生物学における示準化石の役割を果たすものと理解した。
 ただ、シェリーマンのフォロワーの中には困った破壊をもたらす人間もいた気がする(ハザール領内の墓を暴きまくった教師とか)。彼の責任ではないにしても、それもシュリーマンが後世に遺した課題の一つかもしれない。

古代への情熱―シュリーマン自伝 (新潮文庫)
古代への情熱―シュリーマン自伝 (新潮文庫)
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