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覇者の戦塵1944〜サイパン邀撃戦・中 谷甲州

 米軍の兵力がガリガリ音を立てて削られていく……日本軍が構築した要塞の恐ろしさが身に沁みてきた。強大なアメリカ軍にとっても太平洋を越えて大兵力を送り込むことは大変な行為なのだと感じる。
 いったん帰投した空母機動部隊が戦力を回復させて帰ってくるまでのタイムラグは貴重である。日本側からみると戦線を縮小した効果が現れてきている。
 まぁ、アメリカには工作船を組み立ててドックにする装備とかあったらしいので、せっかくの有利もある程度は埋められてしまっているはず。

 さて、中巻ではメジュロ環礁を出た敵船団にたいする伊号五四潜による執拗な襲撃が描かれる。東太平洋海戦の水雷戦隊を思い出した。魔法みたいな推理能力で、敵の動きを完璧につかんでしまう指揮官は凄い。
 何が凄いかと言えば、失敗した場合の威信低下が確実に後の仕事をやりにくくするのに、確信をもって行動できているところだ。自分の推理の内容を多弁に説明すれば、失敗した場合でも(妥当性があれば)威信の低下は避けられるだろうに、すべてを自分で背負い込んでいる。
 まぁ、寡黙な指揮にはデメリットがある反面、成功した場合のメリットも非常に大きくて、難しい行動でも高い士気を保ったまま命令にしたがってくれるようになるはず。要素が複雑になれば、最終的にはこうするしかない気もするなぁ。
 それにしても二隻の潜水艦による戦果は大きすぎた。こちらは一隻も失っていないのに、護衛空母からCBまでダメージを与えている。米軍側は、もう勘弁してほしい気分ではないか。敵の幻影におびえた判断ミスが大きな被害を招いたわけで、米軍の判断ミスもあるのだが。

 大戦果をあげた潜水艦部隊は恐ろしいことに、まだやる気だ。残った翔龍の伏線もあるし、米軍の被害はどこまで拡大することやら。
 翔龍の回収自体は、そんなに時間の掛からない方法でもあるし、他に目的がなくても違和感はないのだけど、きっとどこかで使うことになるのだろう。
 水上艦の放った高機動型を追尾させて撃つことで命中率アップとか……ソ連海軍のドクトリンみたいだな。

 時計を何度も確認する若手が、やんわりと窘められるのはお約束。何か作者に原体験があるのかな?同じく頻出の「薄氷を踏む」方は実体験があると確信できるが。


 陸戦サイドにも超能力の持ち主が登場している。私も彼の能力がほしい。
 その上をいく蓮美大佐は周囲を諦観させているようで――その姿勢は間違っていると言いたいが、圧倒的な現実の前に最後まで反論することは難しい。

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覇者の戦塵1944 - サイパン邀撃戦 中 (C・Novels 41-44)
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カテゴリ:架空戦記小説 | 12:01 | comments(0) | trackbacks(0)

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