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実証 古代朝鮮 井上秀雄

 古代朝鮮の国家形成を東アジア全体に目を行き渡らせながら論じている。そのため、日本や唐がたびたび比較に出される。それだけではなくボッカイが高句麗の後継国家として扱われているところが新鮮だった。
 著者のいう高麗へ続く流れを重視すれば、高句麗は滅亡していない気もしてくる。百済はどうにもならないが……。

 著者の考えでは百済が最初に滅びたのは、制度は整っていても、現実的な内政がいまいちだったかららしい。逆に新羅は他国と比較して善政を行ったことで支持を広げたようだ。
 漁夫の利で漢江流域に割り込んで互いに争っていた高句麗と百済の接触を切断してしまう戦略はずいぶん思い切ったものに感じられた。下手をすれば挟撃を招くのだが、もともと百済の本拠地であった漢江流域には、そのリスクを冒すだけの価値があったということだろうか。

 日本と朝鮮国家の比較では、日本に厳しい感じの評価が多かった。全体主義的な土壌は古代から培われていたと言わんばかり。確かに「お上」なんて、言い方があるのは国民性かもしれない。
 それでも日本人の自己認識とは異なっている感じのする話もあるのだが、戦後に育った国民性もかなりあるので、頭ごなしに否定できない気もした。

 あと、城の形態や官位、字体の変化と伝達など、限られた情報を入念に整理した図表が多くて見応えがあった。

実証 古代朝鮮 (NHKブックス)
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