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四方世界の王2〜あるいは50を占める長子 定金伸治・記伊孝

 まずはウル第三王朝の二代目、シュルギ王がご登場。自分をたたえる文章を数多く残しているため、考古学者に文章ごとに記号を振られている史上初のナルシストキングさん、こんにちは!石版読みも「またおまえか」って呟いているよ、きっと。
 あれを書記候補生の教材にすれば洗脳が捗ったに違いない。さすがに良く考えていると感心せざるを得ない。さすがは当たり前の改革を当たり前にやって、当たり前の成果をあげた秀才王さん(彼がやるまでは当たり前が見つかっていなかったんだろうけど、利害関係が複雑すぎる現代の政治家はには羨望の的に違いない)。
 それにしても文字を使いこなせる古代メソポタミアの王は、どうしてナルシストが多いのか……使いこなせても自慢しない王は、文字が使えること自体を自慢しないからかな。この世界のハンムラビのように。もちろん、文字を読めないナルシストもいる。
 シュルギの妃を見ていると、1巻でシャズの方がナムルにベタ惚れなのだとシャムシ・アダドが言っていた空気が分かる。互いの心を読むのに長けた男女のペアが多い作品である。
 主人公たちは発展途上だが、以心伝心も時間の問題。リム・スィーンの技はイシン伝心なんちゃって。
 男女のペアで考えると、イバルピエルとマシュクムの関係が困ったことになるが、あの二人はまぁ、そういうことで。サムスイルナやイシュメ・ダガンみたいに余った人間が可哀想に感じる。シッパルの知事アウェール・ニンウルタには「なかまだとおもっていたのに、りあじゅうばくはつしろ」としか。

 シャズやシャムシ・アダドの動きが四方世界情勢にリンクしていて、収まるところに意味をもっているところが凄かった。シャムシ・アダドとリム・スィーンの間に張り巡らされた無数の糸をつまんで、高次元のあやとりをしている感じだ。
 ひたすら勘で片付けているイバルピエルも違う方向で見事。エラムにデールを落とさせれば、ラルサとの国際問題も最小限――と思っていたんだけど、リムさんは目敏かった。
 史実ではシャムシ・アダドの一強で、ラルサは遠すぎただけなんじゃないかと思っているんだが。後の国際情勢を語ったマーリ文書に辻褄を合わせるには、ラルサの勢力を後退させないとおかしくなる。
 アッシュール没落後はハンムラビもイバルピエルもリム・スィーンと互角になっちゃうんじゃ……エラムをうまく使えばバランスできるかな?

 最後に自重をまったく知らないエレールさんには、たまげました。彼女の「夢(と書いてあくむと読む)」語りには、父子は守備範囲外なのに不覚にも興奮してしまった。
 まったく読者の想定年齢はいくつなんだよ……火の鳥を小学校の図書館に置くなよ。
 彼女がひねり出した娘を銀だとする理論にもなかなか説得力がある。さすがにリスキーなんですがねぇ。まぁ、幸せにやってくだしあ。
 しかし「シャムシ・アダドにはなれなかっただけ」のイシュメ・ダガンですらあんなに罵倒されるなら、ワイン好きの駄目次男ヤスマフ・アッドゥは首吊り確定なんですが……お兄ちゃんは今後成長するのかな。余計立つ瀬がない。

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2巻の表紙絵がいちばんの気に入り
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