歴史・上 ヘロドトス/松平千秋・訳
2014.01.23 Thursday | by sanasen
歴史の父、ヘロドトスが産んだ息子であるところの著作、歴史の上巻。ペルシア帝国の勃興から三代目のダレイオスまでを主軸に、関連する土地の歴史や風物、人物を物語っていく。
つまりは脱線である。脱線が主題になっているかのような奇妙な作品だが、主軸が非常に興味深いので、ずいぶん経ってから戻ってくる形でも意外と覚えていて楽しめる。
小説を書いていて少しでも話が離れることに抵抗を感じる身としては、ヘロドトスに勇気づけられるところがあった。まぁ、同じ技量を発揮できるわけもないが。
風物に関しては又聞きが含まれている関係もあって奇妙な物が多く、翼のある蛇や砂金を掘る蟻など、奇想天外な法螺話が楽しめた。
蛇についてはヘロドトスが実際に見たと言っているので、比定できる何らかの生き物はあったはずだが……謎だ。
人物ではペルシア歴代の王もさることながら、ペルシア帝国に征服された国々の王が繁栄から没落へのコントラストを感じさせるだけに、印象的だった。
クロイソスなどキュロスに囚われ重用されたことで人間が完成した感さえある。岡目八目は経験者だからこそ効果的に発揮されるわけで、王を経験している人間は貴重な人材であるな。
エジプトでは大した王はいないと述べた後にいろいろと面白い連中が現れる。中でもアマシス王は諧謔に満ちた愉快な男で、物の見方がたいへん興味深かった。
神殿に対する皮肉とも受け取れる対応に洒落が利いている。
神殿といえば神託を重視するところがあり、いろいろとこじつけを説明してくれている。当時の市井にはヘロドトスみたいに頭をひねって、どうとでも受け取れる言葉を正しいように受け取る連中が溢れていたに違いない。まったくギリシア人って奴は……。
関連書評
歴史・上 トゥキュディデス/小西晴雄・訳
歴史 上 (岩波文庫 青 405-1)
つまりは脱線である。脱線が主題になっているかのような奇妙な作品だが、主軸が非常に興味深いので、ずいぶん経ってから戻ってくる形でも意外と覚えていて楽しめる。
小説を書いていて少しでも話が離れることに抵抗を感じる身としては、ヘロドトスに勇気づけられるところがあった。まぁ、同じ技量を発揮できるわけもないが。
風物に関しては又聞きが含まれている関係もあって奇妙な物が多く、翼のある蛇や砂金を掘る蟻など、奇想天外な法螺話が楽しめた。
蛇についてはヘロドトスが実際に見たと言っているので、比定できる何らかの生き物はあったはずだが……謎だ。
人物ではペルシア歴代の王もさることながら、ペルシア帝国に征服された国々の王が繁栄から没落へのコントラストを感じさせるだけに、印象的だった。
クロイソスなどキュロスに囚われ重用されたことで人間が完成した感さえある。岡目八目は経験者だからこそ効果的に発揮されるわけで、王を経験している人間は貴重な人材であるな。
エジプトでは大した王はいないと述べた後にいろいろと面白い連中が現れる。中でもアマシス王は諧謔に満ちた愉快な男で、物の見方がたいへん興味深かった。
神殿に対する皮肉とも受け取れる対応に洒落が利いている。
神殿といえば神託を重視するところがあり、いろいろとこじつけを説明してくれている。当時の市井にはヘロドトスみたいに頭をひねって、どうとでも受け取れる言葉を正しいように受け取る連中が溢れていたに違いない。まったくギリシア人って奴は……。
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