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歴史・中 ヘロドトス/松平千秋・訳

 ずっとダレイオスのターン!なのだが、脱線しまくるいつものヘロドトスなので、ダレイオスの時代を一貫して描いているとは感じさせない。余談を語ることがヒストリエの目的だって自分で言っちゃっているよ、この作者。
 窮状にある相手に対して、ダレイオスは強く同情できる王であったことが色々なエピソードから分かる。
 焦土戦術によって失敗の瀬戸際にたった遠征からよく無事に帰還できたものだ。
 イオニア叛乱前後のことから、ギリシア方面だけでもこんなに多くのことが起こっていたなら、広大なペルシア帝国全体では処理するべきことが毎日大量にあっただろう。
 それともギリシア人が特別に騒々しいだけなのか……その可能性も無視できないように思われる。ただでさえ手の掛かるギリシア人を支配下に組み込んだ上に、他のギリシア人と戦争しようとするなんて、ペルシア帝国の官僚は頭痛が治まらなかったに違いない。
 しかも、都市国家ひとつひとつに対処しなければならないことが、統治の面倒くささを加速させている。代わりに手に入る物もあるには違いないが、ペルシア人に戦争を仕掛けようとしたクロイソスに賢者の掛けた言葉を思い出してしまう。
 まぁ、東地中海と黒海の制海権も絡んでいるので、ダレイオスの視座からみえる発展の可能性がいろいろあったに違いない。

 他にはスパルタの制度に関する記述が興味深かった。スパルタ王の特権が並べ立てられているのだが、こんなにたくさんあるというよりも、数ページで書ききれるほど制限されていると感じた。本当に無制限の権力が許されていれば、記述はどんどん簡潔になるのも確かである。

 中巻のクライマックスになる「マラトンの戦い」も記述があっさりしていて、多くの本でマラトンの戦いに関する分析を読んだ立場からは拍子抜けした。
 詳しく書いてあれば多様な解釈がなりたつわけもない。当然のことではある。プラタイアとアテナイの関係もおもしろい。スパルタがアテナイとボイオティアを噛み合わせるために、プラタイアにアテナイとの同盟を勧めたところなど、神託に社会が左右される一方で、外交戦が展開されていて感心する。

 多くの神託が出てきたが、特に当てはまる事が起きなくて忘れ去られた神託はどれほどあったのだろう。そっちも紹介してほしいものだ。

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歴史・下 ヘロドトス/松平千秋
 ペルシア戦争クライマックス!いつもの脱線していたヘロドトスはどこかへ行ってしまい。人物の前のことや後のことを短く語るのが精一杯である。おかげでトゥキュディデスとの豊富なつながりが感じられるが。  上巻をCルートとすれば中間はNルートで、下巻はLルート
| 読書は呼吸 | 2014/03/12 8:48 PM |