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興亡の世界史02 スキタイと匈奴 遊牧の文明 林俊雄

 ヘロドトスと司馬遷、東西の代表的歴史家が言及した中央アジアの騎馬遊牧民について、最新の発掘調査をふまえた知見が紹介されている。両者の共通点や東から西への変化など、注目すべき要素は多い。
 匈奴とフンを同一視する有名な説については「よくわからない」と真摯に答えている。ドイツやロシア、ハンガリーでは定説になっているらしく、肌に感じるものが(間違っているとしても)あるのかもしれないと思った。
 あと、トルコの紙幣に冒頓単于がいることを知って驚いた。トルコ人が成立時に民族的アイデンティティを必要としたことに関係があるのだとは思うが、ずいぶん遠くの人物を紙幣にするなぁ。
 ともかく遊牧民族のルーツは探りにくいこと、この上ない。
 まだまだ古墳はあるみたいなので、遺体から遺伝子サンプルを集めていけば、あるいはと期待はできる。地球温暖化が脅威になっているのは、なんの皮肉だろう。世界を騎馬遊牧民が支配していれば、まだ地球温暖化は起きていなかったんじゃないかな。

 研究の舞台が広大で、旧共産圏が多いことから、他の地域の歴史研究にはない特色が現れている点も興味深い。関連史料を原典で読もうとしたら、何ヶ国語をマスターすれば良いのやら……ハザールの本で、三言語は必要と書かれていたことを思い出した。
 政治が研究に影響を与える度合いも強いらしく、その事情を看破した著者にロシアの研究者が囁いたエピソードはなんか印象に残った。
 スキタイの古墳と日本の古墳に、それなりの共通点が感じられるのも面白かった。研究者それぞれの背景によって気付けることが違うはず。異なる文化間で、研究者を出しあうことには価値がある。

 遊牧民が連れ去った農耕民に、農業をさせていた可能性も興味深かった。慣れない土地で強いられて農業をやらされた人々の苦労は想像を絶する。雨量は多いのかもしれないが北斜面では寒さも相当激しかったのでは……ほとんど文字に残らない人々の生活に、想いを馳せる機会がえられて有意義だった。
 あと、盗掘者については怒りしか感じない。目・即・斬の遊牧民時代が続いて欲しかったと研究者は思っているに違いない。そうすると古墳を掘れない可能性もあるか……。

関連書評
歴史・中 ヘロドトス/松平千秋・訳
ハザール 謎の帝国 S.A. プリェートニェヴァ著/城田俊 訳
テュルク族の世界〜シベリアからイスタンブールまで 廣瀬徹也

スキタイと匈奴 遊牧の文明 (興亡の世界史)
スキタイと匈奴 遊牧の文明 (興亡の世界史)
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