<< [新訳]フロンティヌス戦術書 フロンティヌス/兵頭二十八 | main | 異戦信長記1〜血風!姉川の役 中里融司 >>

歴史・下 ヘロドトス/松平千秋

 ペルシア戦争クライマックス!いつもの脱線していたヘロドトスはどこかへ行ってしまい。人物の前のことや後のことを短く語るのが精一杯である。おかげでトゥキュディデスとの豊富なつながりが感じられるが。
 上巻をCルートとすれば中間はNルートで、下巻はLルートって感じだな。賄賂に汚いがヘラス防衛の仕事はきっちりこなすテミストクレスはLルート向きの存在だし。
 アルタクセルクセスの余裕は好きだった。時には単なる坊ちゃんであるようにも見えるものの。

 しかし、彼と戦った民族や彼をもてなす羽目になった通路上の民族にとっては災厄以外の何者でもなく、数百年の歴史が一夜にして揺るがされてしまう「パワー」を痛感せざるをえない。
 それに勝ったギリシア人の名誉はさらに高まるわけだが、彼らも一枚岩じゃないのよね……アレクサンドロス大王の先祖、アレクサンドロスに存在感があって、マケドニアの歴史が分かることに有り難さを覚える。
 ペルシア王の使い走りだったマケドニアがアテナイを屈服させてペルシアを滅ぼすことになるなんて、この時代の誰が予想できただろうか?歴史の変転は予想外で力強い。

 マラトンの戦闘描写はやや淡泊だったが、さすがにサラミスの海戦になってくると熱が籠もっている。プラタイアイの戦いはさらに詳細なので読み応えがあった。
 参加兵力を詳しく並べたわりにはラケダイモンとテゲアとアテナイしか戦っていないという……パウサニアスに指揮がごたごたしていたから仕方ないか。それでも勝ててしまったのは占い師の言うとおり「先に仕掛けた側が負ける」戦いだったからだ。ペルシア兵がもうちょっと重武装していれば……。

 蛇足のようで蛇足でないミュカレの戦いも詳しく描かれていて、ペルシア戦争がヨーロッパだけではなく、アジアでも展開されたことが分かる。
 最後のキュロス王の話は、地理にくわしい歴史家らしい結びだ。民族は土地が作るというわけで、ヘロドトスが貫いた思想がみえてくる。解説でそんなことを思ったが、解説の終わりがプルタルコスの印象が悪い話なのは困ったものだ。

関連書評
歴史・上 ヘロドトス
歴史・中 ヘロドトス
ヘロドトス「歴史」〜世界の均衡を描く 中務哲郎

歴史 下 (岩波文庫 青 405-3)
歴史 下 (岩波文庫 青 405-3)
カテゴリ:歴史 | 20:48 | comments(0) | trackbacks(0)

スポンサーサイト

カテゴリ:- | 20:48 | - | -
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック機能は終了しました。
トラックバック