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孫ピン兵法〜もうひとつの「孫子」 金谷治 訳・注

 1972年に銀雀山漢墓から出土した既知の孫子とは異なる内容の孫子。戦国時代の斉の国で活躍した孫ピンの書いたもうひとつの孫子であると判定された、その文章が収録されている。
 情報源がひとつしかないに等しい状態のため欠落した部分が多く、正面から取り組もうとすると欲求不満に陥る危険がある。
 私は途中で考えをあらためて、最初に巻末の解説を読むことにした。出土の経緯が把握できれば、欠落部分の苦痛も緩和できるのだ。むしろ、よくぞ今の世に再び現れてくれたと感謝の念が強くなる。三国の時代までには失われていたという事情が興味深い。
 書は戦乱がなければ比較的保存されやすく、兵書に限っては戦時にも重宝されるのだから、失われにくいのではないか。そんな疑問をもって、答えのヒントがないかと考えながら読んだ。まぁ、成功しなかったけど。
 訳者が注で類似の文章があると指摘しているとき、無意識に「孫ピン兵法」が他の書から表現をもってきたのだと解釈していた。冷静になって考えていると、逆に他の書が「孫ピン兵法」を参考にして、「孫ピン兵法」が失われてしまったせいでそう見える可能性も大いにある。さすがに左氏伝あたりは引用される側なのだと思うけど、成立の時期も考える必要があるのか。

 兵法書としての内容は欠損部分の多さから評価しづらいところがある。孫武の著とされる孫子と見比べて咀嚼するのが面白いかも。
 ありがちな将軍の資質や地形の話以外では、陣形の話や正奇の話が気になった。李衛公問対でも正奇は注目されるところなので。ただ、訳が行われたのが1975年で古く、解釈について気になる点もあった。少なくとも研究全般の進展が気になる。読めなくなった字も薬品処理で判明していたりしないかなぁ。曹操の墓から、彼が蒐集した兵法書が全部出てきてくれれば最高なのに。
 注のおかげで淮南子が気になったが兵法部分だけをまとめた本は出ていないようだ……。

関連書評
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中国古典兵法書・呉子 尾崎秀樹
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六韜 林富士馬・訳
全訳「武経七書」司馬法・尉繚子・李衛公問対 守屋洋

孫〓兵法―もうひとつの『孫子』 (ちくま学芸文庫)
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