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西風の戦記(ゼピュロシア・サーガ) 田中芳樹

 ギリシア風(解説によればビザンツ風。解説がゆいいつ役だった情報。確かに「ギリシアの火」が出てくる)の架空国家ゼピュロシアで繰り広げられる内乱を、現実の世界から飛んでいった高校生の目から追うファンタジー。といっても超常現象は人間が異世界に飛ぶこと以外に存在しな――港町ザラを襲った高潮はどう考えても異常だった。
 まず、三年に一度おこる自然現象なのに、流される位置に家屋が建っていることがわけわからない。高潮に船を乗せて、河口の阻塞を越える作戦を作戦と呼んでよいものか……。
 それまでの戦闘描写はよかったのに、かなりもったいないことをしたと思う。まぁ、ファンタジーだからなぁ。

 西風の王国のお家騒動やレオン・パラミデュースが反乱を起こしてからの展開は非常にテンポよく描写されていて、目新しい情報が多いはずの架空世界ファンタジーの弱点をほとんど感じさせなかった。
 ギリシア語を名詞に応用している関係で、多少は親しみやすさが残っている影響もあるように思われる。
 てすさびに小説を書いてみたりする身には感嘆させられることしきりだ。できるだけ盗みたい。

 反乱軍率いる惰弱公あらため獅子公レオン・パラミデュースと正規軍率いる夜叉公主アポロニアの最大の決戦であるメッセンブリアの戦いは、展開を追っていてかなり楽しめた。とりあえず手書きで戦況図を描いてみたい。
 地形の把握は難しいところだが……。
 森から追い出されたイノシシによって戦いの流れが少し変わる展開も、そういうこともあるかと納得できて面白かった。
 アポロニア得意のカラコール(車がかりと字を当てるのが楽しい)戦術は地形を考えないと、かなりダメな感じだ。本来はそういう戦術なのに「必勝戦術」化してしまったことで、使い手に墓穴を掘らせてしまった印象がある。
 それもまた軍事史の1ページらしくて良し。

 レオンとアポロニアの恋愛については――口絵のシーンがどこかわかってから観直すと感慨深いものがある。ゼピュロシアではいとこ婚はありなのね。
 そういえば偏西風のおかげで雨が大量に降ると言うことは、西海岸にありながら、沿岸の海流は暖流なんだろうなぁ。この世界の大陸配置をなんとなく想像させる設定だった。
 あと、ミハイル王がんがれ。超がんがれ!妹と従兄弟が駆け落ちして、内乱でボロボロのところを隣国に侵略されたけど自力で何とかしよう!!

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西風の戦記(ゼピュロシア・サーガ) (講談社ノベルス)
西風の戦記(ゼピュロシア・サーガ) (講談社ノベルス)
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