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武田軍団を支えた甲州金〜湯之奥金山 谷口一夫

 静岡県境の山梨県南部、標高1500メートルにある三つの金山の総称、湯之奥金山。
 武田氏によって開発されたという由緒正しい金山の調査報告。初期の金山の技術を、遺物から知ることができる。

 湯之奥型挽き臼、黒川型挽き臼、リンズ型挽き臼の発展経緯が興味深い。
 特に中間の黒川型がもっとも効率がよいと判定されていることが……リンズ型は使い方が復元し切れていないらしい。まだまだ不思議なことが一杯残されているのが歴史である。

 湯之奥金山の調査はいろいろな分野の専門家が連携して、多角的におこなわれており、理系では地質や鉱床の専門家が活躍している点が興味深かった。
 成分分析すると、ゆり滓の品位が鉱石より高いことは技術の限界と言われても皮肉に感じてしまう。再処理したら金が得られそうだが、そこまでするボリュームはないのか。
 湯之奥金山は江戸時代に閉山してからは明治や昭和に再開発がおこなわれることもなく来ている。遠出してまだ情報を求めたという民俗班の苦労が偲ばれた。民俗的な話は本書の内容に反映されていないようで……。

 フィールドに残る「大名屋敷跡」などの後世につけられた地名が有毒であることを再確認した。建物の跡すら見つからないとは……城郭研究家が無機的なネーミングを好むわけだ。

新泉社 遺跡を学ぶシリーズ感想記事一覧

武田軍団を支えた甲州金―湯之奥金山 (シリーズ「遺跡を学ぶ」)
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