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狩猟採集民のコスモロジー〜神子柴遺跡 堤隆

 また長野県か……長野県の遺跡が取り上げられやすい傾向が気になる。ひとつには考古学熱の盛り上がりが戦後にあったことに原因が求められそうだ(他の娯楽が無……ゲフンゲフン)。
 本書に取り上げられた神子柴遺跡も長野県を代表する価値をもつ遺跡であり、出土した石器は国重要文化財の指定を受けている。まさに国の宝である。
 発掘者の中に御子柴さんがいて、ちょっと面白かった。現場では冗談が飛んだだろうなぁ。

 シリーズの他の本では加工に伴って生まれた石の欠片が数万に上って出土することが良くあったけれど、ここではほとんど完成品のみが非常に狭い範囲から見つかっている。
 そのため、遺跡の意味が議論を呼び、いまだに結論がえられていない状態だ。おかげで推理小説のように関心をもって読むことができた。

 私も住居説は優れた石器を残していった理由を説明できないことで分が悪いと感じた。地層が大量の火山灰に埋もれていたわけでもなく、複数の人間が暮らしていたなら、出先で大量死があっても石器は回収されるはずだ。
 しかし、デポ要素が強いとしても、あんな状態で残るものなのだろうか。管理体制はどうなっていたのか。人が見張っていなくても失われることはなかったのか。
 神子柴遺跡に暮らす人々の倫理観にまで想像が広がってしまった。

 それにつけても、謎の炭化層がもっと詳しく調べられず、年代測定もされていない点が非常に残念である。果たして謎が解き明かされる日がくることはあるのか。類似遺跡のさらなる発見と、そこから多くの情報が得られることに期待したい。

 背表紙の色で時代を分かるようにしてくれれば便利だと思っていたけれど、こういう遷移期の遺跡があるから難しいことに気づいた。

新泉社 遺跡を学ぶシリーズ感想記事一覧

狩猟採集民のコスモロジー・神子柴遺 (シリーズ「遺跡を学ぶ」089)
狩猟採集民のコスモロジー・神子柴遺 (シリーズ「遺跡を学ぶ」089)
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