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氷河期を生き抜いた狩人〜矢出川遺跡 堤隆

 長野県の八ヶ岳周辺に位置する矢出川遺跡から出土した細石刃から、氷河期に信州の高原地帯で生きた人々の生活を描き出す。
 細石刃の使い方についてまとめて説明がなされており、シリーズの他の本で出てきた細石刃へのイメージを強化することもできた。
 気になるのは植刃器に細石刃を取り付けても、先端部は植刃器のままで再現されていることだ。投げ槍などに使うなら先端がしっかり尖っていた方がいいのでは?実際にはやや斜めから刃が当たる場合が多いのかなぁ。植刃器は細石刃以上に貴重なようだから直接標的に当たってしまって壊れる事態も避けたいところだ。
 シベリアでは細石刃がささった動物の骨が出土しているので、現実にはクリアされていたと考えるしかない。

 鉱物マニアとしては長野県の水晶産地が載っている点も地味に見逃せなかった。しかし、水晶は割れ方が黒曜石より予想しにくいので、積極的には使用されなかったらしい。硬度なら黒曜石より高いんだけどなぁ……。
 山梨県の水晶産地でトパーズがでると堅すぎて加工できないので、ダメな水晶扱いで捨てられていたという話を思い出す。
 目的に一致した材質でなければ、数値上の性能が高くても意味はないのである。旧石器時代の人たちもよく考えて行動していたことは疑いない。

 図の多いシリーズではあるが、見開きの2ページをイラストだけに使ったことには驚いた。
 当時の人に冬の採掘や生活は無理だからと言われる一方で、冬に遺跡を発掘してしまう――しかも、とんでもない方法で雪と泥を「洗浄」してしまう――考古学者がいることには見つける言葉がない……。

 ハシバミの実やチョウセンゴヨウの実が食用になることは覚えておきたい。ハシバミの実30個でご飯一杯分の200キロカロリーということも。これだけで毎年必要なカロリーをえるのはさすがに難しそうだ。

新泉社 遺跡を学ぶシリーズ感想記事一覧

氷河期を生き抜いた狩人・矢出川遺跡 (シリーズ「遺跡を学ぶ」)
氷河期を生き抜いた狩人・矢出川遺跡 (シリーズ「遺跡を学ぶ」)
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