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黒潮を渡った黒曜石〜見高段間遺跡 池谷信之

 黒曜石に関するシリーズの本で何度も話題にあがり気になっていた神津島産の黒曜石をメインにした一冊。黒潮の向こうにある神津島から本州へのアクセス拠点になる伊豆半島東部の見高段間遺跡が中心になっているが、著者の分析は関東一円の遺跡に及んでいて、信州産の黒曜石と神津島産の黒曜石がシェアを争ってきた歴史を魅力的に描き出している。

 いくら陸上輸送が大変とはいっても、神津島への渡海は命を失う危険が高いわけで、信州産に押される場合があるのも無理はない。
 むしろ命懸けでも神津島に渡らなければいけなかった事情が縄文人たちにあったことに感銘を受ける。どちらにしろ漁労などで船出はあったはずだから、その延長線上の危険という意識だったのかな。
 和田峠周辺の黒曜石も関東地方の需要に応えて再開発された痕跡があるそうで、そういう圧力に対応するときの流れがとても気になった。土器の分析からは必要としている人々が直接採掘をおこなっていたわけではないことが示唆されているから尚更だ。

 また、本書は著者の研究人生が垣間見える内容になっている。新品では1000万にもなる高価な分析機器を個人で購入してしまった情念の強さには恐れ入る。支える家族も凄いよ、本当に。
 沼津工業高校の先生が二人も出てきて黒曜石や土器の分析をしている。なぜ地球科学者じゃなくて工業高校の人材が……母数の問題だろうなぁ。
 フィッショントラック法や元素比の比較など石器分析の内容は明らかに地球化け学的なのに、いまいち研究者が直接的に貢献できていない様子が寂しかった。鮫島先生は誤鑑定をしちゃっているし。

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黒潮を渡った黒曜石・見高段間遺跡 (シリーズ「遺跡を学ぶ」)
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表紙の湾の写真が黒曜石の貝殻状断口みたいで狙っているなら面白い
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