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斑鳩に眠る二人の貴公子〜藤ノ木古墳 前園実知雄

 法隆寺の近くにある一つの円墳。藤ノ木古墳と呼ばれるそこからは未盗掘の石室と立派な石棺が発見された。
 残念ながら石棺の中には近代になってから水が侵入していたが、丹念な調査によって多くの情報がえられた。副葬品には大量のガラス玉と立派な太刀という、新しいものと伝統的なものが入り交じっていた。
 石棺の中には二体の男性遺体がおさめられていて、ますます発掘者たちを驚かせる。はたして、二人の人物は誰に該当するのか、限られた資料から著者が推理を試みる。

 復元された太刀の鞘がすごい。豪華絢爛で実に美しい。
 他の副葬品も充実していたようで、時代にくらべて大きな円墳の規模と共に被葬者の高い地位を物語る。
 馬具のパーツである歩揺をはずして棺のなかに入れておくなど、不思議な行為の痕跡も気になった。消化器を取り除き、ベニバナで防腐されていたと推定される遺体の状態からは、個人的には意外な当時の人々の死生観が感じられる。

 江戸時代に至るまで供養がおこなわれていた事にも驚いた。それだけに一生を捧げていた人が何人もいたわけで、畏れの気持ちの強さは信じられないほどだ。

 発掘調査に関する工夫の話も興味深かったが、一刻も早く棺を開けなければいけないと決めてから、レプリカを造って実験をする流れは堅実だが悠長に感じられた。
 金魚すくい改の準備ができたのはファイバースコープで棺の内部を事前に確認していたおかげだな。

 被葬者の正体については、著者の推定通りだとすれば、エピソードが「貴公子」のイメージを妨害している。まぁ、時代が違えば価値観も違う。昔の人には貴人でも驚くほど荒っぽい人がいるのは確かだ。
 歴史の敗者は不利に書かれてしまうものだし、割り引いて考える必要があるな。

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斑鳩に眠る二人の貴公子・藤ノ木古墳 (シリーズ「遺跡を学ぶ」)
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