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江戸のミクロコスモス〜加賀藩江戸屋敷 追川吉生

 東京大学のキャンパスがある場所には、かって加賀藩の「大使館」である江戸屋敷がおかれていた。
 継続的な発掘から、広大な敷地をもっていた100万石の大邦の姿が明らかにされる。

 外には派手に、内側では質素倹約。
 非常に前田家らしい姿勢が江戸屋敷においても貫かれていることが分かった。外から見える長屋だけには瓦を敷いておくなど、なんとも微笑ましい。

 質素なりに藩士の不満を和らげる工夫はしていたようで、北陸から取り寄せた魚が出土するところが面白かった。
 故郷の味は大きな癒しになったことだろう。発掘を通して加賀藩江戸屋敷に暮らしていた人々の「人間味」に触れられた気がする。
 トイレから鉛が検出された話は、屋敷図の時点でなんとなく化粧品が原因であることは予想していたが、害を考えるとやっぱり恐ろしい。瑪瑙のかんざしをトイレに落とした女中はご愁傷様。
 さぞかしショックだっただろうな。

 出だしで江戸時代の考古学研究が傍流であることを知って驚いた。確かに縄文時代や古墳時代ほど発掘の対象になっているイメージがない。近い時代だけに文章との照合も可能で、明らかになることが多いと思うので、時代に関わらず発掘が進んでほしいものだ。

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江戸のミクロコスモス・加賀藩江戸屋敷 (シリーズ「遺跡を学ぶ」)
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