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吉備の弥生大首長墓〜楯築弥生墳丘墓 福本明

 岡山県はいにしえの吉備。古代史において独特の重きをなす土地で弥生時代でも最大級の墳丘墓がみつかった。前方後円墳へつながる要素を含むとされる楯築弥生墳丘墓を岡山大学の近藤義郎氏が掘る!

 発掘調査隊の責任者がすべて近藤義郎氏であり、(著作時に)存命の方がここまで業績が遺跡とつながって目立つシリーズは珍しい。注:2009年にお亡くなりになった。
 地域住民への働きかけをねばり強くおこなって発掘を成功に導いたとのことだが、そこまで抵抗を受けるなら突出部の土木工事が行われてしまうときにも地域住民に抵抗してほしかった。おそらく突出部までは神域だと認識されていなかったのだろう。昔の姿をとどめていればともかく、木が生えてしまうとなぁ……記録保存もされずに永遠に失われてしまったのは本当に惜しい。どこかに写真でも眠っていないものか。

 肝心の楯築弥生墳丘墓は巨石を立てたり、木棺に朱を大量にまいたり、独自性にあふれる墳墓だった。特殊器台の写真をみて「円筒埴輪じゃん」と思ったら、実際に円筒埴輪に発展するものだと解説されていて嬉しい。忘れてしまったことも多いが、これまでに読んだ本の内容が自分の中に蓄積されていることが確認できた。
 遺跡の目玉である狐帯紋石については表紙にもなっている「顔」の彫り物が怖すぎた。じっとみていたら寒気がしてきた。あなおそろしやおそろしや。
 貯水塔をつくった人達はよくこんな怖い御神体がある丘を掘り崩す気になったなぁ。本当に怖いのは高度成長期の狂気なのかもしれない……知らなかっただけなら本当に怖いのは無関心だな。

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吉備の弥生大首長墓・楯築弥生墳丘墓 (シリーズ「遺跡を学ぶ」)
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