<< 武蔵野に残る旧石器人の足跡〜砂川遺跡 野口淳 | main | 国宝土偶「縄文ビーナス」の誕生〜棚畑遺跡 鵜飼幸雄 >>

日本考古学の原点〜大森貝塚 加藤緑

 明治時代に日本にこわれてやってきた動物学者モースが大森駅の近くで汽車の中から発見した大森貝塚。その発掘は日本の考古学史にとってきわめて重要な原点となるものだった。
 最初からかなりの完成度でおこなわれた大森貝塚の研究が紹介される。

 モースの発掘は層位学的ではないなどと否定的な話から入って警戒させつつ、ワールドワイドでみても画期的だったモースの大森貝塚研究が紹介されている。
 最初にいい指導を受けられて良かったのだが、その流れが断絶してしまうのが非常に残念だ。モースが動物学者であって、生粋の考古学者でなかったことが弟子の進路に影響を与えている。まぁ、日本の生物学にとっては良いことがあったと思われるので、考古学側の視点から見るだけでは評価が偏ってしまう。

 モースが唱えたプレ・アイヌ説については、そもそも蝦夷とアイヌを同一視していることから検討の必要があり、当時の通説が間接的にみえた。さらに坪井正五郎のコロボックル説が唱えられて混沌とした状況に……それでもモースが残した出土品や図版の価値が損なわれることはまったくなく、再検討に耐える情報を提供し続けている。基礎のしっかりした考古学研究の強みである。

 他の本ではさらりと名前を出して説明される加曽利式土器の情報がまとめられていて、門外漢には助けになった。加曽利B2式のそろばん玉状に側面が膨らんだ形状は土器を洗いにくそうだ……そもそも土器は洗われていたのかなぁ。

関連書評
霞ヶ浦の縄文景観〜陸平貝塚 中村哲也;モースの弟子たちにより、日本人だけでの初めての科学調査が行われた貝塚。

新泉社 遺跡を学ぶシリーズ感想記事一覧

日本考古学の原点・大森貝塚 (シリーズ「遺跡を学ぶ」)
日本考古学の原点・大森貝塚 (シリーズ「遺跡を学ぶ」)
カテゴリ:歴史 | 00:42 | comments(0) | trackbacks(0)

スポンサーサイト

カテゴリ:- | 00:42 | - | -
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://sanasen.jugem.jp/trackback/2253
トラックバック