<< 東山道の峠の祭祀〜神坂峠遺跡 市澤英利 | main | ヤマトの王墓〜桜井茶臼山古墳・メスリ山古墳 千賀久 >>

描かれた黄泉の世界〜王塚古墳 柳沢一男

 九州北部福岡県の築豊炭田地域で、土取りに関連して発見された王塚古墳の装飾された石室。
 古代日本人の死生観と大陸との文化的つながりを示唆する装飾古墳の実体を、それぞれ3年と4年をかけて復元をおこなった小林行雄氏と日下八光氏の成果を基礎にみていく。

 古墳全体についてもよくまとめていて、通説を効率よく知ることができた。石室そのものが死後の世界と考えられていたという解釈には、霊魂をひっかける釣り針の飾りがある古墳を知って感じた疑問への一つの答えになった。
 石室に絵が描かれた古墳といえばキトラ古墳や高松古墳が有名で、王塚古墳のことは寡聞にして知らなかったのだが、復元画をみていると絵の見事さに驚かされる。
 意図的にシンメトリーを避けて、三角形の模様も規則的にならないようにした辺りに、作成者特有の美意識が感じられる。整形されていない花崗岩の壁がキャンバスだったことも、むしろ望むところだったかもしれない。

 遠く高句麗を含め、様々な地域の要素が王塚古墳に結集していることも興味深かった。ある意味で、尾張や西日本各国の力を結集して築かれた奈良の茶臼山古墳やメスリ山古墳に見られる(とシリーズの本で言っていた)要素にも似たものがある。
 だからこそ、この地域の盟主的な存在で岩戸山古墳に葬られたと考えられる筑紫君磐井は大和朝廷にとって脅威だったのかなぁ。同じ天に太陽は二つ輝けない。
 著者は王塚古墳の石室から類推して岩戸山古墳の石室絵画は想像を絶するものだと想定している。そう言われてしまうと本当に気になって気になって気になって。

関連書評
筑紫君磐井と「磐井の乱」〜岩戸山古墳 柳沢一男
未盗掘石室の発見〜雪野山古墳 佐々木憲一

新泉社 遺跡を学ぶシリーズ感想記事一覧

描かれた黄泉の世界・王塚古墳 (シリーズ「遺跡を学ぶ」)
描かれた黄泉の世界・王塚古墳 (シリーズ「遺跡を学ぶ」)
カテゴリ:歴史 | 20:46 | comments(0) | trackbacks(0)

スポンサーサイト

カテゴリ:- | 20:46 | - | -
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://sanasen.jugem.jp/trackback/2258
トラックバック