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世界をリードした磁器窯〜備前窯 大橋康二

 佐賀県の伊万里焼には江戸時代から世界に輸出された歴史がある。その細かい編年を現地での発掘調査から明らかにしていった話。
 世界に展開している伊万里焼の編年が分かれば、現地に到着したときの年代も推定できるので、世界的な歴史研究に影響を与えたと考えられる。日本の地方を舞台にしながらスケールの大きな話だ。

 中国の歴史と密接に関わっている点でも日本が鎖国しながら世界と繋がっていたことを感じさせる。
 明から清への王朝交代と鄭氏台湾への禁輸政策が絡んで、備前の焼き物が空いたニッチを確保する流れが分かる――そして、中国が輸出を再開すれば市場から閉め出されるのであった。
 輸出が途絶えている間に技術力でリードして、市場を守れる状態にするのは無理だったか。さすがに中国の焼き物は手強い。英語では国名が陶器を意味してしまうくらい世界的にブランドがあるからなぁ。

 窯業に関する技術的な知見がいろいろと面白かった。磁器を効率的に焼くために重ねて置くための工夫が変遷していく。最高級品みたいに容器に入れて焼いたら、容器を熱するためのエネルギーまで必要になってしまい効率が悪い。だからと言って一枚に空間を占有させるのはもっと効率が悪いのだった。
 1637年の鍋島藩による窯の整理が強引で戦慄した。薪を取って山を荒らすからと、一挙に地元の窯が止めさせられてしまっている。まさに横暴だが、燃料をバイオマスに頼らねばならない状況の大変さも、後の説明から想像できた。

 収録されている焼き物が素敵で、最後に出てきたコーヒー用のカップとソーサーには魅了された。これは欲しい!
 図録のかなりを提供している柴田夫妻コレクションが詳細は不明ながらすごいことが伝わってきた。佐賀県立九州陶磁文化館にいけば見えるらしい。地震被害が心配になる施設だ……。

 秀吉の朝鮮出兵に絡んで連れてこられた朝鮮人技術者の影響が強くでていること――特に叩き出し成形の出現は特殊――ことも忘れないで起きたい。

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世界をリードした磁器窯・肥前窯 (シリーズ「遺跡を学ぶ」)
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