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火星の人 アンディ・ウィアー 作/小野田和子 訳

 よし来たぞ。アクシデントだ。ヒャッホー!RTG万能説!!ダクトテープ万能説!!万能接着剤万能説!!!
 読んでいるうちにテンションがおかしくなる火星サバイバルSF。火星に一人残されたぼくらのマーク・ワトニーの奮闘を描く。限られた資源を駆使して火星で唯一の人命をつなごうとする彼の戦いの結末は。

 定期的にアクシデントは起こるものの、一つのアクシデントを解決できないでいる間に新しいアクシデントに遭遇することは回避している。それがかなり重要な印象を受けた。まぁ、マクロな目でみるとそうでない場合もあるのだが。
 ワトニーが乗ってきたマルス3は、三番目の有人火星探査計画であり、ちょうどアポロ13が三番目だったことに似ている。対処の工夫も似たところがあって、ありあわせの材料で必要なものをいろいろ作っていく様子が楽しかった。
 火星で農業をはじめるのには驚いた。けっこう簡単に土づくりができてしまっているが、実際にやったらどうなるのだろう。ハブの内部に農業が可能な光が溢れていることが後半までイメージしにくかった。ベッドの構造も最初のうちは分からなかったなぁ。

 スキャパレリ・クレーターへの旅では火星名物の砂嵐にも遭遇していて生き残りには相当の運が必要だったことも実感できた。農業中にあれが起きてもアウトだったわけで毎日深層心理で不安を感じていたはず。まぁ、ほぼ真空を隣にしての生活は不安なことばかりだ。

 それに圧倒されないワトニーのジョークセンスがすばらしかった。一人称パート、そして孤軍奮闘がおもしろすぎて、NASAと通信ができたときには物足りなく感じてしまったものだ。
 そこらへんの不満も巧みに解決されていた。

 それにしても気になるのはハブに残されたバクテリアたちである。大半は好気性だと思うが、根性で生き残って火星に広がる可能性はないのだろうか?
 本当にそうなったら細菌的な意味でマーク・ワトニーの星になるな。火星の人じゃなくて、人の火星に。

関連書評
火星縦断 ジェフリー・A.ランディス:火星の人の解説でも紹介されているが、火星上の機材を利用することで、この作品を連想した。確認すると訳者が同じである。小野田和子氏をチェックしていると、火星SF好きは得をするかもしれない。

火星の人 (ハヤカワ文庫SF)
火星の人 (ハヤカワ文庫SF)
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