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弥生集落像の原点を見直す〜登呂遺跡 岡村渉

 昔は教科書にも載っていた、というか今は教科書に載っていないという登呂遺跡。静岡県の平野に位置する全国的知名度をもっていた弥生時代の水田と住居がセットになった遺跡を1997年から2002年の間におこなわれた再発掘の結果をふまえて再評価する。

 めずらしく実際に行ったことのある遺跡だったので感慨深いものがあった。登呂博物館はリニューアルされたそうなので、もう一度いってみたいものだ。
 今度は学芸員さん(ボランティアの人だったかも)にまともな質問をするぞ!

 著者はセンセーショナルな吉野ヶ里遺跡が刷新した弥生時代遺跡のイメージもまた偏ったものなのではないかと問題を提起する。
 平和で格差が比較的ゆるやかな東日本の弥生時代社会。そんな風景があったと想像することも可能になってくる。腐食実験の結果を考えても鉄製品は残りにくいみたいなので武器がないことを証明するのが難しい点がもどかしい。
 洪水で維持が大変なことを逆手にとって中立を売っていたとする説は興味深かった。その通りだとしたらずいぶん外交が上手な指導者がいたことになるな。

 気になる弥生時代の農耕技術や収穫量についても触れている。静岡市と静岡大学による栽培実験では一反あたり籾で240〜300キログラム、玄米換算率75%で180〜225キログラムの収穫があったらしい。1962年の一人当たり玄米120キログラム消費のデータに当てはめれば、養えるだいたいの人口が求められる。
 湿地の遺跡だけに木製品も多く発見されていて、スギ材の徹底的な利用方法が分析されているのが興味深かった。登呂遺跡発見のきっかけになった丸木舟は静岡空襲で焼けたと想像していたら、ふつうに写真が出てきた。歓喜。

 なお、なぜか分からないが、著者の文体がSF作家の谷甲州に近い。

関連書評:弥生時代の集落シリーズ
東西弥生文化の結節点〜朝日遺跡 原田幹
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弥生集落像の原点を見直す・登呂遺跡 (シリーズ「遺跡を学ぶ」099)
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