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前期古墳解明への道標〜紫金山古墳 阪口英毅

 未盗掘で大量の副葬品が発見された大阪市北部の紫金山古墳。戦後すぐに発掘調査がおこなわれ、近年調査資料がまとまった本古墳の位置づけが歴史的にも資料的にも再確認されている。
 土を盛るというよりも山を削って造営されている点が、実に前期の古墳らしい。前期の古墳だけに埴輪も円筒埴輪タイプに限定されている――埴輪は紫金山古墳がさらに安定した年代資料の定点となるために欠かせないのに、十分な質量が発掘されていないのが残念だ。
 本書では紫金山古墳は四世紀前半の築造と推定されているが、そこだけを切り取って言われるのは著者(その引用もと)の本意ではあるまい。

 第二章を読んで(もしかして……)と感じていたが、近年まで発掘調査報告書が刊行されていなかったのにはビックリした。
 やはり発掘された戦争直後の時期が厳しかったのか……発掘史料をきちんと保管していた京都大学と半世紀以上を経て、発掘調査報告書を作成した著者におつかれさまを言いたい。

 三回にわたる測量調査の結果がすべて載せられていて、等高線がどんどん緻密になっていく様子が時代の変化を感じさせた。それにしても後円部に設置された貯水槽の存在は、せっかくの未盗掘古墳なのに画竜点睛欠くというか、後から造られたので蛇足というか……まぁ、これを造る工事のおかげで紫金山古墳が発見されたわけだが。

 史料が豊富であれば、それはそれで、副葬品が棺の中にあったか外にあったかの解釈など、悩みがあることが面白かった。とても贅沢な悩みであり、こういう贅沢な悩みなら考古学者はどんどんしたいに違いない。

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前期古墳解明への道標・紫金山古墳 (シリーズ「遺跡を学ぶ」)
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