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香乱記・中 宮城谷昌光


 楚漢戦争の前哨戦。秦の名将章邯が関東を所狭しと暴れ回り、反乱軍を次々と平らげていく!彼を函谷関で足止めした周文の将器の大きさが分かろうというものだ。
 軍を立て直した周文に援軍と兵糧を継続的に与えつつ、章邯が更迭されるように反間の計を打っておけば、それで秦帝国は瓦解したのではないか。陳勝の定見のなさが、名将の足を引っ張っている。
 秦に程近い場所で孤軍奮闘する状況も、兵の補充には不利に働いただろう。しかし、退けば函谷関の地の利を活かせないわけで、周文にとっては非常に苦しい戦いだったと思う。

 章邯がひとたび函谷関から躍り出てしまえば、抵抗できるものはなかなか現れず、陳勝軍や魏軍が次々と葬られていく。そこで立った項梁が斉軍と連携して見事に章邯を打ち破るところが中巻のハイライトになる。
 田横の活躍はどうしても斉周辺に絞られてしまっており、大舞台が向こうから近づいてくれるのを待つしかないところがある。
 遠征軍を従えて中原を疾駆する田横が見たくなるなぁ。

 関中は中原を吹き荒れる嵐も知らず――でも平和とは言いがたく――狂った政治を続けている。守備力は高いけど、外部の情報に疎くなりやすい弱点が秦の故地にはある。辺境を自覚していた時代には情報収集に積極的でも、一度世界の中心になってしまうとかえって孤立するようだ。
 もしかしたら、項羽が彭城に首都を定めたのは、彼の器には適当だったのかもしれない。どちらにしろ遠征しっぱなしになるから、策源地としての意味しかないかなぁ。

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香乱記〈中巻〉
香乱記〈中巻〉
カテゴリ:時代・歴史小説 | 20:01 | comments(0) | trackbacks(0)

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