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香乱記・下 宮城谷昌光 毎日新聞社

 秦の二世皇帝は馬鹿みたいに死んで、いよいよ楚漢戦争が幕を開ける。ひとり独立をたもつ田氏斉は楚の猛攻撃を受け、漢のだまし討ちを受け、悪戦苦闘をつづける。
 しかし、そこには道の通った美しさがあった。

 漢の人材が軒並み批判されていて、項羽より下に言われることさえあった。劉邦への批判は後に著者が「劉邦」を描いて、清らかな王者の姿勢を描写することを考えると、違和感を禁じ得ない。
 田横を持ち上げるために劉邦たちを下げるのはやりすぎではないか。
 まぁ、ソウサンみたいに批判しつつも、行動には深みがある描き方をされているので、本書の描写も田横側の価値観が投影されたものであるのは分かる。
 まさかソウサンが話を終わらせることになるとはね。女性以外の田横の人材は軒並み戦死か殉死をしてしまったので、しかたがないなぁ。老子の思想で進めてきたのに殉死でまとめてしまうのは悲しい。

 田横の子供が蘭の腹の中にいて日本に渡ったみたいな描写は、日本独特のもので、中国史を描く小説としては引っかかるものを感じた。楚漢戦争が終わっても7年に過ぎないから徐福とほとんど時間差はないんだなぁ。
 フィクションの中で日本に渡ってきた人物を集めたら凄いことになりそうだ。それだけで300人を超えたら笑ってしまう。

 あと、与し易しという表現が作中に使われていて「与する」は「味方する」だからおかしいんじゃないかと思っていた昔年の疑問が――宮城谷先生までもが使うならと国語辞書を引いたら「与し易い」が「相手として扱いやすい」として載っていて――氷解した。さっさと辞書を使えと。

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香乱記〈下巻〉
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カテゴリ:時代・歴史小説 | 20:14 | comments(0) | trackbacks(0)

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