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大聖堂・製鉄・水車 J・ギース/F・ギース 栗原泉 訳

 タイトルになっている三つに象徴されるが、まったくそれだけにはとどまらない中世ヨーロッパのテクノロジーについて、まとめた一冊。ギボンに暗黒と言われた中世が技術史の観点からは、まったくそんなことはなく、多くの前進があったことが紹介されている。
 まぁ、最初は中国(やインド)から伝わってきたものを取り入れる展開が多い……中国人はパテントが取れるものなら取りたいだろうな。現代の価値観では問題ある経済活動に正当化の材料を与えていたりして。

 ヨーロッパが外部の優れた技術を遠慮なく取り入れ、ヨーロッパの国家間でもそうだったのに対して、リードしていたはずの中国は技術を外に出すことはあっても取り入れることは少なかった印象がある(ヨーロッパの兵器を紹介している中国の本が出てくるので完全になかったわけではないにしても)。もしも、ヨーロッパのように優れた技術とみれば取り入れることが出来たなら、技術的に互角に近い状況は維持できたのではないか。
 まぁ、そういう取り入れは日本こそやるべき立場だったのかもしれないが……日本のスケールなりにやってはいたな。

 著者も言っているが、中世ヨーロッパの恐ろしいところは、ひたすら「進歩」しつづけて黒死病があったときすら技術的な後退がみられないことだ。
 今日が昨日より良くなる。良くする。そんな確信が現実を呼び込んでいる。「昔はよかった」と自分の体の健康と社会環境を同一視して言論を牛耳る人間が幅を利かせていなかったんだなぁ。寿命の短さがプラスに働いたのなら皮肉すぎる。

 タイトルになっている中では水車がもっとも印象的だった。とりあえず何でも水車の動力で出来ないか考えてみることが中世ヨーロッパの技術者にとっては習い癖になっていたとしか思えない。
 回転運動という基本は蒸気機関になっても変わらないから、産業革命の萌芽ですらあったに違いない。
 技術史について非常に勉強になる本だった。

中世ヨーロッパの城の生活 J・ギース/F・ギース 栗原泉 訳
中世ヨーロッパの農村の生活 J・ギース/F・ギース 青島淑子 訳
中世ヨーロッパの都市の生活 ジョゼフ・ギース/フランシス・ギース 青島淑子 訳

大聖堂・製鉄・水車―中世ヨーロッパのテクノロジー (講談社学術文庫)
大聖堂・製鉄・水車―中世ヨーロッパのテクノロジー (講談社学術文庫)
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