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中国史のなかの諸民族 川本芳昭 世界史リブレット61

 周辺民族との関連の中で範囲をひろげ、融合して大きくなってきた「漢民族」。その歴史を北狄との関係を中心にして紹介するリブレット。後半では南蛮にも出番が与えられている。
 北魏の孝文帝による改革を例にして、中華を征服した異民族王朝が、漢民族の文化に対して示した姿勢がいろいろと紹介される。

 完全な遊牧民から来ている遼や元は非宥和的な態度を示しているのに対して、北魏や農耕を部分的に行っていた金や後金(清)は漢民族の文化を受容する傾向がみられる。
 その結果として、満州族がアイデンティティを失いかけている現状があるのだとしたら歴史の皮肉は強烈である。
 弁髪を守るために太平天国に命がけで抵抗した清の漢民族がいたという記述からはいろいろと一筋縄ではいかないものも感じた。けっきょく漢民族はどこから現れたのか、どこへ行くのか。
 際限なく同化吸収統合を続けていくことこそが漢民族のアイデンティティなのかもしれない。

 もしも次に中華が異民族に支配されることがあったら、どんな政治展開を辿るのか。思考実験はできないこともないが、現実性のある想像ではなくなっているのも時代の変化だな。

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中国史のなかの諸民族 (世界史リブレット)
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