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湖底の城〜呉越春秋5巻 宮城谷昌光

 ついに5分の2まで到達した復讐劇。作中の伍子胥は年数で換算しているが、読者は巻数で換算する。つまり完結は12.5巻になるのだろうか?
 そっちも孫武先生の――主に資料不足の――力で短縮してくれることを期待せざるをえない。
 伍子胥に孫武をくわえた呉王闔閭のいきおいは、まさに翼をえた虎であり、向かうところ敵なしに見える。しかし、そんな最中でも用心をおこたらない孫武には呉が立たされている状況の厳しさがよく見えている。
 国は民を安んじることはできても、将軍は心を休める暇もないのが孫子の兵法である。呉での活動期間が分からない事情を、孫武の過労死に求めそうな雰囲気だ。孫武ならそのリスクまで読んで、自分の兵法の後継者を用意しておくけどな!
 ……考え込みすぎて、もうわけがわからない。季節が巡って、軍旅をもよおす時機が決まっていることが、慎重居士に辛うじて行動を許している気がしてくる。

 とりあえず呉は楚に従属する小国を脱落させはじめた。徐は独自に勢力を伸ばして大きくなっていた時期もあっただけに、この扱いは残念だ。城に対する水攻めの雰囲気が曹操がやったものを連想させた。
 壁を乗り越える瞬間を攻撃する奇策は通用したのかなぁ。孫武は蟻みたいに壁に取り付くのは余程のことがない限り許さない将軍だから、もりあがっている徐の君臣には悪いけれど、疑わしい。

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湖底の城 呉越春秋 第五巻
湖底の城 呉越春秋 第五巻
カテゴリ:時代・歴史小説 | 13:12 | comments(0) | trackbacks(0)

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