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彼方の山へ 谷甲州

 谷甲州氏の若かりし頃のエッセイというより経験談。高校大学時代のバイタリティ溢れる行動から青年海外協力隊時代のバイタリティ溢れる行動まで、いつもバイタリティが溢れている。最後の方でも少なくとも肝臓はバイタリティが溢れていることが確認された。

 山がテーマなのでSFを書くに至った背景については影を踏むのがやっとなのが少々残念。山と星との近さについても案外意識されていないようで一繋がりの趣味と考えるよりは相補的なふたつの趣味と受け取る方が真相に迫っているかもしれない。「コミュニケーション飢餓」に関してなら最新機器に囲まれた宇宙の深淵とネパールの山奥で似通ったところがあったのだろうか。都市部の方がコミュニケーション飢餓を起こしているような気がしなくもない。
 キリマンジャロ登山までの流れはいろいろ端折っている部分が気になるもののまとまりがよかったのだが、それ以降は寄せ集めというか回想する色が濃すぎて馴染めなかった。じっさい、巻末をみるとキリマンジャロまでがひとつのシリーズで残りはいろいろなところからツギハギした話だったので仕方がないのだが。

 それでも新説「人はなぜ山に登るのか?」の内容は興味深かった。内容そのものよりも、登山のメソッドに関してもいつもの文体が出るのが分かったという意味で。何だか話を聞いている感覚と小説を読んでいる感覚が重なって奇妙な思いに囚われたよ。
 まったく登山経験のない私だが、この章に書かれた条件なら1も2もなく飛びつくだろうと確信できたのが不思議だ。エベレスト山頂周辺は「死者の人口密度」でいえばチベット奥地を超えるのに……。

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