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神秘の島(上) J・ベルヌ作 清水正和 訳 J・フェラ画

 アメリカ南北戦争のさなか、アメリカ連合国の首都リッチモンドから気球で脱出した北部のシンパである5人の男と1匹の犬はたいへんな嵐に巻き込まれて太平洋の孤島にたどりついた。
 リーダーである技師サイラス・スミスに導かれ、徒手空拳から文明の利器をつくりだしていく男たち。無人島であった「神秘の島」リンカーン島は瞬く間に先進地帯に生まれ変わっていく。

 無人島に一つだけもっていくなら、サイラス・スミスをもっていきたい。そんなことを考えてしまうほど彼の活躍はめざましい。鉄や陶器はいうに及ばず、グリセリンまで作ってしまうのだから凄い男だ。
 鉄を還元するときの一酸化炭素と黄鉄鉱を焼くときの亜硫酸ガスの発生が、かなり心配な作業だった。
 現代では無用の長物あつかいされている黄鉄鉱にも硫酸を得るという使い道があったんだな――現代は石油精製の副産物として硫黄が得られているからなぁ。

 ほかの登場人物もそれぞれ特技をもっていて、自分の技術を見事に活かしている。無人島の閉鎖環境にありがちな険悪な関係になることなく、創意工夫を進めていくので読んでいて気持ちが良かった。


リンカーン島「こんなこともあろうかと石炭層だけは」
サイラス・スミス「でかした!」

 状態の島はかつて沈んだ大陸(ムー大陸化)の一部という設定なので、動植物も異常に豊富だ。現実にはニュージーランドとチリの間には存在しえない地質的特徴をそなえている。まだ大陸移動説も認められていなかった時代の作品なので、そこはしかたがない。
 そういう粗をのぞけば科学的に忠実であろうとベルヌが努めていることがよく伝わってきた。ただ「今日は新月なので雲がなければ光が射す」という文章は……皮肉じゃなければ失敗だな。

 挿し絵も豊富で状況がイメージしやすい(文章との一致が気になるものが少しあるが)。なにより島の地図が魅力的でイマジネーションをかき立てられた。

 ストーリーを引っ張る神様が遭難者の工夫を観察するために創ったような島と、遭難者たちへの手助けの謎が気になる。
 ロビンソンマニアの甥を楽しませようと無人島送りにしたオッサンの小さいオッサンバージョンが活動しているのかもしれない。

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