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ローマ人の物語将后.蹇璽淦こΔ僚焉 塩野七生

 ローマ帝国が終わってしまったことよりも、この著作が終わってしまったことの方が感慨深い。見知らぬ帝国の千年よりも、自生の十五年の方が重いという事であろうか――もっともリアルタイムで読み出したのは途中の巻からなのだが。

 最後のローマ人スティリコは非常に興味深い人物で、アレクサンドロスの書記官エウメネスに少し似ているかもしれない。異民族であるが故に誰よりもローマ人(ギリシア人)らしく振舞わなければいけなかった点で。
 彼の自分が自分であるための思い切りの足りない行動はよく批判される類のものであるし――例えば最後のビザンチン皇帝コンスタンティノス11世など――私も批判してしまう側の人間だが、こうまでローマ人的人生を貫いてきたのをみせられてしまうとスティリコの立派さに頭が下がる。
 それに対して皇帝の大部分が情けないこと!特に西ローマ帝国の皇帝たちは無為無策極まりない。キリスト教の弊害がもろに出ているのか、完璧さを求められるからこそ行動できない木偶である。彼らよりはまだしも蛮族の傭兵隊長たちのほうが魅力的だ。

 滅亡後の時代をかざったゲルマン部族と東ローマ帝国の列伝は蛇足的ではあるものの、パックスローマナの時代と比較したときの落差の大きさには圧倒される。まぁ、元首制時代のローマ軍が帝国領外でふるっていた猛威を、ついに浴びる時代がきただけかもしれない……文明人が暴虐を受けた場合には詳しい資料が残り同情されるが、蛮族が同じ目にあった場合は一方的な扱いしかされず、資料も残らないものだ。だが、事実が消えるわけではない。

 最後になって塩野氏は答えを提供してくれなかったが、私がつらつらと読んできて感じたのは法体系の上書きの限界で社会が硬直化したこと――ローマの積み重ねの上で良い方向に転がる余裕が失われていったこと。それとローマの半島上にあるという位置だ。もっとも後者はいちゃもんのようなもので、初期条件ではあの位置が最適だったのだが。
 しかし、帝国が形作られていく中で、指揮系統上の要地でなくなってしまった上に北からはやすやすと侵攻を受ける地続きの場所であったことは不運だった。けっきょくは皇帝(元老院)、首都ローマ、帝国領の三位一体がローマの実体だったと思うので――その三つが乖離して、さらにキリスト教が混ざってきたことが衰亡を招いたともみれる。

ローマ人の物語将検.リストの勝利感想

ローマ人の物語〈15〉ローマ世界の終焉
ローマ人の物語〈15〉ローマ世界の終焉
塩野 七生
カテゴリ:歴史 | 12:15 | comments(2) | trackbacks(0)

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コメント
はじめまして。Moff Takaと申します。
自分もローマ好きなので、かの帝国の滅亡には興味が尽きません。
ローマ人の物語、にかんしては、たまに珍説が載っていたりして首をかしげることもありますが、帝国の歴史を俯瞰できる日本語の著作としては、とても価値のあるものだとは思います。

元首政滅亡、ひいては帝国滅亡に関しては、おっしゃるとおり、騎士階級重用による、権威の低下が、原因の一つとも考えられますが、情報伝達速度の関係上、地方権力の伸張は、仕方のないこととも思います。
| Moff Taka | 2008/10/29 6:45 PM |
 はじめまして。コメントありがとうございます。

 塩野先生のローマ人の物語は、この一冊でローマのことをすべて分かったつもりになってしまうのが怖い著作ですね。非常に読みやすいだけにその点が気にはなります。

 ローマはアケメネス朝ペルシア帝国にならったのか街道を整備したりして情報伝達速度にはかなり気を使ったほうだと思いましたが、やはり自重の巨大さは効いていたのでしょうね…。 
| こいん | 2008/10/29 11:12 PM |
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