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漂流の島〜江戸時代の鳥島漂流民たちを追う 高橋大輔

 ロビンソン・クルーソーのモデルになった人物の住居跡を発掘したことのある著者による日本の漂流の島「鳥島」の探検と、実際に漂流した人々の人生を描いた本。
 東京都の中に、冒険の舞台となりうる無人島が存在しているギャップを強く感じさせる。あと、伊豆諸島と小笠原諸島の位置関係がやっと理解できた気がする。
 八丈島が相対的に大きな島として存在感を示しているなぁ。八丈島より近くにある青ヶ島もおもしろい存在で、鳥島がたどったかもしれない有人島の例を示していると思う。
 こちらも上陸にはたいへん苦労しているようだ。

 主役となる江戸時代の漂流民については、その中に有名なジョン万次郎が含まれている。彼が日本に帰ってきて行ったことが、鳥島の領有権を主張することだったのには鳥肌が立った、鳥島だけに。
 個人的に印象に残ったのが土佐の長平たちが流木で脱出用の船を造ったことで、ジュール・ベルヌの冒険小説「神秘の島」でおこなわれた製鉄を思わせることが、船造りの道具を用意するために行われている。
 何かに導かれるように材料となる流木や鉄の碇があつまったことも興味深かった。神意を感じても不思議はない体験だ――それくらい目を皿にして材料を求めていたのだろうな。
 鳥島には何度も漂流民がやってくるのだが、脱出する彼らが後の漂流民の助けとするべく、道具やアドバイスを残していった事実には胸が熱くなった。
 極限状態だからこそ発露される人間性もあるのであろう。一方で、死んだ仲間の服を独り占めにして注意された人物がいたことも書かれており、漂流の体験が人間性をどこまでも露わにしてしまうことを示していた。

 著者は火山学者にお供していった時にみつけた洞窟の発掘調査願いを東京都に提出したのだが、違法にも窓口で弾かれてしまったそうだ。
 宮内庁の壁による古墳調査の拒否を思わせる出来事で、自国の歴史を大切にしない態度には呆れてしまう。アホウドリの保護が必要なこともあって慎重になっているのは分かるのだが、何かあったときの責任者でない人物まで事なかれ主義である必要はあるまい。
 ともかく一番に上司の意を汲む組織の残念さを感じる。

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封印された日本の離島 歴史ミステリー研究会

漂流の島: 江戸時代の鳥島漂流民たちを追う
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