<< 月刊ニュートン2016年9月号 | main | 世界の都市地図500年史 ジェレミー・ブラック >>

バーブル〜ムガル帝国の創設者 間野英二

 あのフマユーンの父親として一部で有名なムガル帝国初代のバーブルを描いた伝記的なリブレット。世界史リブレット人の046巻である。
 激動の中央アジアで三度もサマルカンドを手に入れて失ったバーブルが、一方で歴史的に大きな業績を残した文人であったことを詳らかにしている。

 表紙の本を読むところが絵になっている君主の姿は、たしかに西方では珍しいのかもしれない。
 古代中東ならシュルギやアッシュールバニバルみたいに字を書けることを自慢している君主がいたなぁ。本を読んでいる姿の絵にも、バーブルの無邪気な自慢好きという性質が関わっていた気がしてくる。
 足を組むときはちゃんと靴を脱いでいるところがポイント高いが、寝るときも甲冑姿であるべき(?)武将としてはどうなのか。

 首の塔は当時の常識だったから仕方ない――だからこそ、異を唱えて改革してほしかった面はある――として、雪中の行軍でみられたバーブルの高潔な人格が興味深い。
 というのも、アレクサンドロス大王の砂漠の行軍を思い出させるからだ。アレクサンドロスロマンの派生系と考えてもいいのではないか。バーブルならイスカンダルについての本は絶対に読んでいるし。

 バーブルが自分の人生を描いたという「バーブル・ナーマ」について、著者が世界初の校訂本を成立させたと知って非常に驚いた。他にも失われたと考えられていたバーブルの著作をいくつも見つけており、中央アジアの歴史学に大きな貢献をしている。
 複雑な関係をもった国々の間を渡り歩いて調査しやすい日本人研究者の立場もいい方向に作用したのではないか。そうして挙げた成果がまた好感をよぶ正のスパイラルが起こってほしいものだ。
 著者によるバーブル・ナーマの邦訳は研究者向けの高価な本で、絶版とのことだが、なんとか読みたいと思った――調べたら2014年以降に平凡社から再出版されていた。よし、読もう。

関連書評
ムガル帝国時代のインド社会 小名泰之
ムガル帝国の興亡 ナショナルジオグラフィックDVD

バーブル―ムガル帝国の創設者 (世界史リブレット人)
バーブル―ムガル帝国の創設者 (世界史リブレット人)
カテゴリ:歴史 | 22:50 | comments(0) | trackbacks(0)

スポンサーサイト

カテゴリ:- | 22:50 | - | -
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://sanasen.jugem.jp/trackback/2840
トラックバック