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バーブル・ナーマ3 バーブル・著/間野英司・訳注

 MAPはどんどん南に移動してきてついに舞台はインドに。本書ではヒンドと表記される大地をめぐってイスラム教徒同士あらそった後は、異教徒のラーマ・サンガーと最終決戦をまじえる。
 そして、征服の足場固めの最中にバーブルは死去するのであった――本人の著作ということもあり、死の瞬間までは描かれていないが別の史料から彼の死を紹介する文章が収録されている。
 フマーユーンへの父親バーブルの非常に強い愛を感じるエピソードだった。フマーユーン宛の手紙では兄弟仲良くすることを説いていたり、比較的「普通のお父さん」を想像させる場面があった。
 もちろん普通がいちばん難しいのである。傑出したバーブルだからこそ普通のお父さんを征服事業の合間にやることができたのだろう。

 バーブル軍はルーム式(オスマン・トルコ式)のやりかたをすっかり会得していて、荷車で固めた移動式の陣地から大砲や火縄銃を雨霰と敵に浴びせている。
 この強靱な中軍に旋回攻撃をこなす遊牧民の機動力があわさっているのだから弱いはずがない。
 そうだとしても大軍との戦いに兵士たちを奮い立たせ、広い戦場を切り盛りするバーブルの統率力の凄まじさが感じられた。

 ベンガル人との戦争などでは河川を前にした攻防を繰り広げていて中央アジア出身のバーブルが水辺の戦いにも長じていたことが分かる。
 ガンジス川を泳いでわたる初老君主だからなぁ……彼が海まで到達しなかったことが、ちょっと残念だ。

 インドの動植物にも書いていて、いささか単調ながらも興味深いのだが、果物の味に関する評価がシンプルで笑ってしまった。「とても良い。悪くない」みたいなさっぱりしたまとめが続いていた。
 チュルク文学の星であるバーブル・ナーマの散逸した部分もいつか発見されることを心の底から願わずにはいられない。

バーブル・ナーマ 3: ムガル帝国創設者の回想録 (東洋文庫)
バーブル・ナーマ 3: ムガル帝国創設者の回想録 (東洋文庫)
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