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史上最大にして最後の機甲戦〜湾岸戦争大戦車戦・上 河津幸英

 航空攻撃の威力ばかりが取り沙汰される湾岸戦争であるが、それはアメリカのプロパガンダによるものであって、実際は第二次世界大戦型の大規模な戦車戦が行われた最後の戦争であったと著者は言う。
 本書は、その視点から湾岸戦争における地上戦を詳細におった上下二巻の大著である。口絵以外はモノクロであるものの参戦した兵器の写真や図解が大量に収録されていて、理解の助けになる。
 すでに戦後の立場からはアメリカ軍(多国籍軍)必勝の戦争であったと感じてしまいがちだけれど、当時のアメリカにはベトナム戦争の後遺症も強く残っていて泥沼の地上戦を危惧する意見もあったと知って目からウロコが落ちた。
 被害の見積もりも悲観的であって、実際とのギャップが非常に大きい。このころは東側が輸出した軍事技術も高く評価されていたわけだ。もっともイラク軍はドイツから戦車輸送車を購入したりしており、必ずしもソ連的な軍隊をつくっていたわけではなかったが。

 もはや無敵に思えてくる第三世代のMBTであるM1A1エイブラムズについては開発史から紹介されていて、米軍がこの戦車にかけていた微妙な期待が伺える。
 M4シャーマン中戦車への17ポンド砲搭載に揉めた頃からまるで成長していない……。
 暗視装置とTOWのような対戦車ミサイルの活躍も非常に大きくて、単純にエイブラムズだけの活躍で勝利が得られたわけでもない。
 逆にイラク軍は複数の兵器を有機的に組み合わせて戦うことがなかなかできないでいる。通信の問題もあろうが、やはり制空権が得られないことが大きく響いている感じだ。

 湾岸戦争を彩る将軍たちにもスポットライトを浴びせており、後方のシュワルツコフと前線のフランクスが対立する模様が興味深い(本人たちはたまったものではなかったはず)。
 サウジアラビアの国王が合理性度外視で攻め込んできたイラク軍の撃退を命令していたことが印象に残った。しかし、勝利したあとの捕虜への対応では妙な紳士っぷりを発揮しており、ひたすら彼を嫌う結果にもできなかった。

湾岸戦争大戦車戦(上) (史上最大にして最後の機甲戦)
湾岸戦争大戦車戦(上) (史上最大にして最後の機甲戦)
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