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石造物が語る中世職能集団〜日本史リブレット29 山川均

 中世の日本に宋から渡ってきた石工たちがいた。その中の一人が寺院に多くの層塔を立てる石工集団「伊行氏」と「大蔵氏」の祖となる。
 ついつい石垣と城郭の関係に触れると思っていたのだが、思わぬ方向に展開した。表紙の写真をちゃんと見ていれば気づいたはずなのだが……宗教的な関係で残りがいいだけじゃなくて、いろいろな銘が打たれていることも期待できる。
 研究が捗るわけである。

 それでも遺された情報は断片的であり、著者は推理を重ねて、後継者や制作者の同定をおこなっている。学問として、ここまでの推理が許されるかは疑問であったが、趣味のレベルでは面白そうだ。あえていえば小説の分野に爪先を突っ込んでいた。

 明恵と宝篋印塔を日本に持ち込んだと著者が推測する慶政の深い関係も印象的だった。
 慶政が天狗に明恵の来世を聞いたエピソードがとても時代を感じさせてくれた。そこまで気にしてくれる友人をつくって逝けたならば幸せだろうな。

関連書評
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石造物が語る中世職能集団 (日本史リブレット)
石造物が語る中世職能集団 (日本史リブレット)
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板碑と石塔の祈り 千々和到 日本史リブレット31
 日本の中世に宗教目的で作られた多くの板碑。その研究の一例が関東地方を中心に紹介されている。  江戸時代からの長い研究の歴史があって、当時の文化人の日記などを丹念に読み解いていくことで判明する事実がある。板碑が作られた中世だけじゃなくて、その後の時代
| 読書は呼吸 | 2017/09/11 12:03 AM |