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航空宇宙軍史・完全版1 谷甲州

 カリスト-開戦前夜-とタナトス戦闘団を大幅に加筆修正して、まとめて収録した完全版の一冊。おおむね外惑星動乱の時系列に沿った順番で刊行されている。

 カリスト-開戦前夜-ではやはりダグラス将軍の殺害に関する意志決定が不明瞭に感じられた。ヒュン少佐が航空宇宙軍の回し者だったとも思えないのだが、どうしてこうなったのやら。
 キンズバーグ財務部長のあつかいを考えれば、エリクセン准将も自殺するべきではなかったかもしれないな。生きて激しく主張した方が彼の考えは生き残ったのではないか。
 それともエリクセン准将がすべての泥をかぶったから、キンズバーグ財務部長が顧問として影響力を残せたのかな。どれだけ主張しても相手の考えを変えることのできない無力感に苛まれていたエリクセン准将に、実力行使に出た後も尽くした言葉をさらに尽くせと強いるのも酷ではある。
 けっきょく彼の思想が叶えられるまでに、とてつもなく長い時間が掛かってしまった。エリクセン准将は汎銀河連合を自分の夢を受け継いでくれた存在と認められるのであろうか。
 軍令部のアホコンピューターと違って、生きていないので分からない。

 タナトス戦闘団はカリスト-開戦前夜-でも活躍したダンテ隊長が激しく動き回って月面のセントジョージ市の工場を破壊する。
 電線火災を利用して工場を焼き尽くす作戦は、第二次世界大戦の空母で起こった「船火事」をふまえたものに思われた。セントジョージ市の豊かさが、戦争に勝ち目のないことを物語るのも、戦前の知米派がもっていそうな感覚である。
 だが、楽観的で鈍感なダンテ隊長はそれを感じていなかった模様。

 人口30万人のセントジョージ市の様子は間接的に月面都市観光をしている気分で楽しめた。地球人観光客とカリスト人であるダンテ隊長の感覚の違いもおもしろかった。
 ロドリゲス一族が「パソコンに強い」ことはムルキラに定めづけられたレベルで真実なんだろうな。

 一番かわそうなのはアンドレーエフだと確信した。あまりにも手強い女性に出くわし、人生を振り回され、種々の薬物投与まで受ける羽目に……。

関連書評(加筆修正前の文庫感想)
カリスト-開戦前夜- 谷甲州
タナトス戦闘団 谷甲州

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航空宇宙軍史・完全版一  カリスト-開戦前夜-/タナトス戦闘団 (ハヤカワ文庫JA)
航空宇宙軍史・完全版一 カリスト-開戦前夜-/タナトス戦闘団 (ハヤカワ文庫JA)
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