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航空宇宙軍史・完全版二 火星鉄道一九/巡洋艦サラマンダー 谷甲州

 第一次外惑星動乱の全体的な流れが一冊でわかる。完全版一では開戦までの経緯と、開戦劈頭の奇襲攻撃が分かったわけで、こうしてみると短編集の集合体でも上手くまとまっている。

 やっぱり目立つ存在は外惑星連合唯一の正規巡洋艦であるサラマンダーに関する物語であろう。
 土砂降り戦隊からサラマンダー追跡までの4本が巡洋艦サラマンダーに関連する話になっている。航空宇宙軍のあまり冴えない部署に配置された個人の働きがつながって、歴史を完全に変えてしまう様子が分かる。
 これぞ歴史の一面と言えるが、本人たちでも正確に認識できないほど事情は複雑である。サラマンダー側の立場になって考えると、ついていないにも程がある。
 まぁ、幸運だったとしても末路には大差がなかったかもしれない。アナンケ迎撃戦で、死すべき定めの作戦に投入された囮艦隊と仮装巡洋艦隊が一隻の犠牲も出さずに済んだのは、シュルツ大佐の加護と思いたい。

 サラマンダー追撃戦の様子がここまでビスマルク追撃戦を連想させる内容だとは最初に読んだときは感じなかったなぁ。
 そう思ったのだけど、古い単行本の感想を確認したら、ちゃんとビスマルク追撃戦に言及していた(あの感想を書いたときが初見じゃないけど)。
 過去の感想と照らし合わせるのも大事だな。

 敵がもっている兵器を我が一から開発する点で、タイタン航空隊と巡洋艦サラマンダーは似ている。そうして考えると、外惑星連合の開発陣はかなり健闘したと思われる。
 もっとも、タイタン航空隊の場合は「寄生戦闘機ゴブリン」みたいな運用上の制限も大きかった。タイタンの大気組成について最初の執筆時とは比べものにならない情報が得られたので、さすがに話の雰囲気が変わっていた。

 終戦時の混乱がわかる最終兵器ネメシスを読むと、開戦時と同じく政変はカリストで起こっており、ガニメデの政治的な安定感が際立つ。巻末の組織表によれば外惑星連合軍の主席司令官はガニメデ宇宙軍参謀総長であるのも、その関係だろうか?それこそ開戦時にミソをつけて、幕僚会議議長が交代した影響が大きいのかな。
 カリストからの重水素輸出がガニメデやタイタンからの物よりも遙かに多いという「ドン亀野郎ども」の情報も両国の政治的な安定度の差に影響していそうだ。
 それにしてもエウロパの気配が薄いな……あちらはイオと違って地上都市で生活できるだろうに。水分が多すぎてガニメデやカリストに比べると鉱物資源には恵まれないのかなぁ。

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航空宇宙軍史・完全版 二: 火星鉄道一九/巡洋艦サラマンダー (ハヤカワ文庫 JA) ( )
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