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アレクサンドリア E・M・フォースター 中野康司・訳

「眺めのいい部屋」を書いたイギリスの小説家E・M・フォースターによるアレクサンドリアの本。ひとつの都市の歴史を追うに留まらず、この地が育んだ精神世界までもが見えてくる。
 アレクサンドリアの歴史はアレクサンドロス大王に始まっていて、エジプト土着の要素もあれど、ギリシアそして地中海世界とのつながりが強い。
 そんな特殊な位置関係がアレクサンドリアを世界でもまれな都市に育てあげている。

 プトレマイオス朝ははじめの三代が黄金期であって、それ以降は衰退の傾向にあった。ただし、肥満して無気力な夫にして兄弟のかわりに、派手派手しい王妃にして姉妹が表舞台に立っていた。ちょっとだけ応仁の乱時代の室町幕府を連想してしまうあり方だ。
 プトレマイオス二世フィラデルフォスの二つ名が「愛姉王」だと知って近親婚の事実以上におののく。現地のエジプト人はもっとおののいたと著者は言っているが……?

 精神世界に関することでは神と人との距離の問題。それを埋める「方便」のいろいろな発明が興味深かった。なかでもプロティヌスの「一者(ト・ヘン)」「知性(ヌース)」「魂(プシュケー)」の考え方はさまざまな創作に応用されていると思われ、興味深かった。
 いろいろこねくりまわした哲学やキリスト教にくらべると、イスラム教はシンプルで力強いが、退屈という印象を受ける。
 それも20世紀のイギリス人である著者の目を通した場合の印象であることは注意が必要だろう。

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アレクサンドリア (ちくま学芸文庫)
アレクサンドリア (ちくま学芸文庫)
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