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李陵 中島敦

 わずか5000の歩兵だけで匈奴の単于ひきいる大軍とたたかった李陵をみまった悲劇をえがいた歴史作品。
 武帝が悪いよ武帝が。ぶっていい?
 自分などはついつい短絡的にそんな考えになってしまうのだけど、李陵はいざしらず司馬遷は単純に武帝が悪いとは考えない。巨視的にみれば偉大な人物だからと……そういえば呂后の支配を民衆にとってはけっこうなものであったとまとめた人物だった。
 司馬遷の怒りによって歴史をみる視線が歪んでいないなら後世の人間にとってはありがたい。しかし、すべてを出し尽くして死んでしまった司馬遷の様子には悲しさを覚えた。史実が違った様子であることを祈らずにはいらない。

 李陵の対比に自らを曲げず最後まで祖国に忠義をとおした蘇武が出て来る。鮮烈な生き方をした彼が主人公にならず、李陵が主人公に選ばれた理由を考えてしまう。
 やはり完成された人間よりも、悩みを抱えた人間のほうが描写のしがいがあるのだろうな。弟子でも孔子じゃなくて子路が主人公に選ばれているし、悟浄出世が悟空出世じゃない理由も近そうだ。

 李陵の息子の消息を伝えるラストには、彼の血が文字のない匈奴の歴史に消えていったことの儚さが感じられた。

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青空文庫
中島敦 李陵
カテゴリ:時代・歴史小説 | 23:43 | comments(0) | trackbacks(1)

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