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ヒトラーと第三帝国 地図で読む世界の歴史

 リチャード・オウヴァリー著、水井清彦 監修、秀岡尚子 訳。
 第一次世界大戦から戦後ドイツまで、ナチスドイツに関する情報を地図に盛り込んだ歴史本。第一次世界大戦から立ち直りかけていたドイツが世界恐慌で絶望のどん底に突き落とされ、ナチ(本書ではナチスではなく、ナチと呼んでいた)の躍進を招いてしまう流れは未来を知っているだけに絶望的だった。
 ナチの経済政策は失業率こそ低下させたものの、労働者の収入を増やすには至らず、実業家だけが得をする形での経済回復をまねいた点も覚えておきたい。
 それでも労働者たちは職を失うよりはと消極的にナチを支持した。また、食糧自給率向上の努力と厳格な配給によって第二次世界大戦中のドイツは第一次世界大戦ほど食糧不足には陥らなかったことも興味深い。
 いちおうナチも歴史に学ぶ部分はあったらしい。

 ナチが描いた戦後のヨーロッパ地図に、ISが描いた地図を思い出した。クリミア半島を直轄量にしたがっていることから黒海の制海権に興味があったようだ。東端のバトゥミ周辺をほしがっている理由はなんだろう。
 まさかのアララト山関連か?

 1300万人におよんだ動員がドイツ社会にあたえたインパクトも地図や図でわかりやすく説明されていた。女性を家庭に閉じこめたがったナチが、女性の労働力に頼りまくっている点は皮肉と言うより必然なんだろうなぁ。
 外国人労働者の酷使もひどい。ドイツ人労働者相手よりもやりたい放題できることを「発見」してSSに監督させるとか、ろくでもないことばかり思いついている。
 枢軸国の中ではブルガリアがナチのユダヤ人絶滅政策に乗らなかったらしく、その評価が上昇した。巻末資料によれば戦前に50000人いたユダヤ人が戦後も45000人残っている。おそらく自然の移動もあるだろう。
 なお、主権をうしなっていたポーランドは3351000人いたユダヤ人が戦後は8万人に激減している……。

 戦争そのものの地図は比較的すくないが、第三帝国のむちゃくちゃさを印象づけられた後だったので滅亡したときはホッとした。まぁ、戦争が終わった後の資料も強烈なものが多くて、悪夢そのものは終わらなかったのだが。

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ヒトラーと第三帝国 (地図で読む世界の歴史)
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