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よみがえる古代山城〜国際戦争と防衛ライン 向井一雄

 白村江の戦い以降、唐の侵攻に備えるため日本国内に築かれたと通説で言われていた古代の山城(さんじょう)。中世以降の山城とは系統のことなる技術でつくられたそれらの分布や研究史がまとめられている。
 文献に載っていない古代山城は「神籠石系山城」と呼ばれ、わけて考えられてきた歴史があるが、その分類も変化していて謎の多い存在である。
 そもそも築かれた年代すらはっきりしない山城が多い。
 その辺りの事情が著者の視点から整理されている。

 低地に位置していて、土塁が街道側の正面にしかない「びんぼっちゃま」状態の防御態勢になっている城の存在が興味深い。
 まるで古墳における「正面」論だと両者をつなげて考えていた。在地勢力の力を削るために築かれたなら戦国時代の築城につながる部分もある。外敵への対応をテコにして支配体制を深めていったとすれば、鎌倉時代の元コウとも結びついてくる。
 逆に考えれば古墳造営は在地勢力の力を削ぐ目的もあった?などと思索が広がるが、ようするに日本社会にくりかえし表れるパターンに古代山城も沿っているのかもしれない
 ただし、解釈する側がそういう風に考えてしまいがちな可能性もある。

 韓国における城郭研究が進展したことで両国の山城の比較からより多くのことが分かってきた。中国東北部の城も注目らしい。朝鮮民主主義人民共和国だけが古代城郭研究の空白になっている……せめて人工衛星画像解析から補完できるといいのだが。
 また日本の中世・近世の城郭研究家と連携して古代山城を研究することの必要性も説かれていた。

 朝鮮半島における三国やボッカイに、唐と日本が絡んだ古代の国際的な政治環境もとても興味深かった。もっとも、唐は朝鮮半島以外にも戦線をもっていて統一新羅との戦争を切り上げたのは、そちらに注力するためだったというから、やはり巨大である。

関連書評
日本の城[古代〜戦国編]〜知られざる築城の歴史と構造 西ヶ谷恭弘・香川元太郎
戦国の堅城〜築城から読み解く戦略と戦術

鬼ノ城 発掘報告書:本書の中で言及されていた報告はこれだろうか。

よみがえる古代山城: 国際戦争と防衛ライン (歴史文化ライブラリー)
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カテゴリ:日本史 | 00:50 | comments(0) | trackbacks(0)

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