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侵略者の平和 第一部 接触 林譲治

 光速を超え恒星間宇宙に進出した那國人類文明は50光年離れたエキドナに人類が存在していることを知る。そして国内政治の問題に絡んだ思惑もあって、帝都テクサカーナと那國防衛軍の二つの組織が調査船団を編成した。
 こうして惑星状星雲のガスが後ろから来たガスに追突されるような「ファースト・セカンド・コンタクト」が始まった。

 那国側は反物質どころかモノポールまで発見している遥か未来レベルの超文明なのに対して、エキドナ側はちょど第二次世界大戦前後の文明レベルにある。架空戦記小説家として名をはせた林先生にとっては前者も後者もお手のもの。それぞれに独自性溢れる世界観というより「組織観」を構築してくれている。何だよ、宇宙艦隊司令長官が「征夷大将軍」って……。
 下士官どころかエキドナの村民レベルの認識にまで注意を払っているのも特徴だろう。認識が世界を描くのだとしたら、透明な軍人や権力者や学者の認識だけではなく、白濁した一般民衆のそれも世界に立体感を与える重要なファクターなのだ。そんな視点に気付かせてくれる。
 まぁ、さらに下にされる「人間扱いされないものたち」の非業の声も聞こえるのだけど、それはあまりに強烈すぎるために世界観よりはテーマに働いている。遥か未来の世界なのにあまりにも過酷な差別。それを存在させる社会的圧力のおぞましさには総毛だつ。
 考えてみれば帝政が行われていた時代からまだ1世紀経っていないし、女性に参政権が与えられたのだって数世代前からなのだ。これが過去や未来のことと言明できるほど現代社会、日本社会はまともだろうか。振り返させられる。

 それでいながらいい感じのカップル(かコンビ)がいくつも形成されているのもロマンを感じさせてくれていい。那国では人材活用が進んでいるため、エキドナでは皇族なら女性でも権力を握れるためと大きな違いがある気もするが、男女のやりとりが多いのは華やかでいい。
 それもマーさんとか、ノンたんとか、驚異的な愛称がいい歳をした大人相手に平然と使われるのだから、いやはや。荊軻も主人の事を「大ちゃん」と呼んでいれば、きっと有能な怠け者となって遅筆の限りを尽くしてくれたろうに、照れがあるから愛憎の奇妙な絵図をみる破目になるのだ。

 ラストで圧倒的な科学技術力をもつ那國によるエキドナ侵攻がはじまったけれど、シズノ姫とノース大佐が「知性化戦争」的に何とかしてくれるさ。SF界三大珍味のひとつグーブルーの焼き鳥がでてこないのは残念だが、林譲治世界では鹵獲兵器がひとつあれば互角に戦えるのさ。二系統のものを活用していれば勝利だって不可能じゃない!

侵略者の平和〈第一部〉接触
侵略者の平和〈第一部〉接触
林 譲治
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