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侵略者の平和 第二部 観察 林譲治

 あたしの王さまはあたしだもん、とシズノ姫が言ったのかは定かではないが電波の音には驚かされる。
 まったくエキサイト二重翻訳ネタにでも刺激を受けたのか、エキドナ人と那國人の間の意志の疎通に関するエラーの数々には笑ってしまった。そもそもはテクサカーナ治安警察がしょせんは無能者の集団にすぎないことに起因するのだが……一部の貴族のしょうもない事情のために全てを動かそうとするからこうなるのだ。そして元々貴族連中が有能ならば、こんな問題は生じちゃいない。

 それでも正面切った作戦は何とか上手くいっているのは技術力の差もさることながら、現場レベルでは一概に無能ではないことにあるのだろう。能力主義の軍隊だけが平民出世の希望であると同時に、平等を押さえつける暴力機関なのだから良く出来ていること。
 ただ矛盾には酌量の余地があるのではと思う。那国のテランという言語そのものが支配者向きにできていることに、かなりの深謀遠慮が想像できるからだ。要するに第三惑星の環境を破壊してしまった反省から、テクサカーナの人類はあえて封建制のまま科学技術を発達させることで破局を防ごうとしたのではないか。
 禁忌のないグラール女王国が12000年を過ごしたらどうなってしまうのか、そのシミュレーションを見せられたよう。何事にも最善の解決方法なんてないんだろうなと嘆息してしまう。
 だからこそ、その時代、その空間の人間にはよりベターを目指して歴史に働きかける必要があるのかもしれない。そして、恒星間宇宙に乗り出す時代になってしまえば那国の社会制度はまったくの無意味。エキドナ王室よりも必要性が感じられない。那國防衛軍は那國の帝都に小惑星爆撃でもしちゃえば?
 宇宙に広がった人類の文化的生物的同一性の問題には考えさせられるものも多かったけれど、流れに棹をさすのは難しいとしか結論がでない。あるいは均質を諦め、近隣への植民をあえて禁止して、極めて遠方への植民だけを行うべきかもしれないな。

 軍事行動の展開は宇宙人VS第二次世界大戦軍というよりアメリカ軍VSイラク軍を参考にしている気がした。高度情報化された軍隊の精髄は、同時に情報処理機能というとてつもない弱点を抱え込むことにもなる。あんがい、自分と同等以上の相手と戦うには向かない機構のような……。
 アラビアの語り部にダムダリが肉弾攻撃を仕掛けてくれれば決着がつくんだが。
 パイラの赤色レーザーサーチは潜水艦がピン音を受ける恐怖に変換すると何故か分かりやすかった。そっちの経験の方がないんだけどなぁ……。

侵略者の平和〈第二部〉観察
侵略者の平和〈第二部〉観察
林 譲治
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