<< 恐竜の大陸 南アメリカ ディスカバリーチャンネル | main | 伊能忠敬〜日本をはじめて測った愚直の人 星埜由尚 >>

宇宙軍陸戦隊〜地球連邦の興亡 佐藤大輔

 特殊な緊急任務をあたえられて惑星ハイリゲンシュタット犬帽澆衫った国場義昭大尉。彼が直面した人類の限界を問いかける恐るべき事態が描かれる地球連邦の興亡の外伝的な作品。
 敵の正体が人類という展開は珍しくないものの、その設定を地球連邦のレゾンデートルである「人類の存続」に絡めて、物語をいっそう奥深いものにしている。
 またALH軍の装備に関して、架空戦記で著者がつちかってきた知識がいかんなく発揮されている。軌道兵器の保有禁止は理解できても、航空兵器の保有禁止はやりすぎに感じられて、ややご都合主義的に思えないこともなかった。海軍まで大型艦が保有しにくい巻き添えを食らっている。
 でもまぁ、宇宙軍が生まれるなら空軍から生まれる可能性が一番高い。

 自由生態党(FHP)軍の指導者たちが、戦隊カラーになっているのは、作者らしい諧謔に満ちた設定だ。カクテルなのは戦隊じゃなくて仮面ライダーだけどな。
 やはりレッドはリーダーで、イエローはおデブキャラなんだ。
 しかし、「人類万歳」と言わせながら「間違いなく人類である存在」を食わせているのは道理が合わない。多様性を主張するなら、ノーマルな人類も人類の内にならねばおかしい。自由生態党は、どんな理屈をつけて自分たちを納得させていたのやら……。
 イエローの様子とピンクの発言から、内戦勃発前の民兵やハンターに襲われていた時代から、FHPの一部は人間を食っていたと思われる。テラフォーミングで危険化した原生生物に被害が紛れていたのだろうか。
 皮肉にも41万の犠牲と引き替えに、彼らも人類であることが国場の判断によって認められた。つまり「人類」は地球連邦によって大量虐殺されうる……殺戮の順番が逆にならなかったのは、意図的だろうな。

 スターミィの圧倒的攻撃力については、強力であればあるほど制限(洗脳)が必要との理屈は理解できる。ALHが服用している「アッパー」でも常用しようものなら一人でも惑星を破壊してしまいかねない。
 もちろん人類の存続には寄与しないことになる。
 あと、ヲルラは銀河規模の環境テロリストだったんだな。それはそれで衝撃だった。来襲当時は「ヲルラは地球環境を破壊しすぎた人類に対する神の裁き」だと主張する集団がいたに違いない。

 最後まで読んで、最初からもう一度読み返すと発見することが多くておもしろかった。最初から必要な情報をすべて提示してほしい気もするが、実力を認められた大物作家だからできる話の進め方である。
 いや、そうでなくてもディテール部分に引き込んで読ませるのが、故佐藤大輔の得意技だったかな?

 攻撃目標Gは、シン・ゴジラとはパラレルのパロディ。そんな感覚をもった。

佐藤大輔作品感想記事一覧

宇宙軍陸戦隊 - 地球連邦の興亡 (中公文庫)
宇宙軍陸戦隊 - 地球連邦の興亡 (中公文庫)
カテゴリ:SF | 19:44 | comments(0) | trackbacks(0)

スポンサーサイト

カテゴリ:- | 19:44 | - | -
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック機能は終了しました。
トラックバック