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沈黙のフライバイ 野尻抱介

沈黙のフライバイ
 系外惑星のドップラー探査法にヒントを得たような測位システムのアイデアが中心。だが沈黙のフライバイには疑問が残った。
 相手から情報をえようとするなら、こちらからも情報を与えて反応を探るのが効率的だからだ。事実、地球人は相手が近付いてくるという情報だけであれほどの情報提供をしたわけで。知的生命がいる可能性の見積もりにもよるが、多少の呼びかけをしても損はないのではと思う。
 そういうコミュニケーションの基礎を知らないで文明を発展させた異星人がわんさかいるのはゾッとしないところがあった。宇宙の価値観は多様だと片付けてしまえばそれまでか。
 赤色矮星のハビタブル・ゾーンも系外惑星が様々な恒星にみつかる時流をついていて巧い。

轍の先にあるもの
 やけに現実的にやってくる宇宙時代。軌道エレベーターの建設方法は原始的な吊り橋の建設方法に似ている。それでもやっぱり橋なのか。
 一人のSF小説家がひとつの宇宙探査結果に強烈な虜になっていくプロセスが興味深かった。彼のような病人が人類に現れ続けるかぎり、我々の前進は止まらないだろう。
 いちばん大きな溝がTYと縦にかかれているように見えて笑ってしまった。人類の先客がイニシャルを落書きでもした?

片道切符
 片道切符の方が往復切符より高い。そんな不思議なことも世の中にはある。
 こういう独断専行はあまり好きではないのだが、ミッションを統括する側の慎重さや世論の目の不合理な厳しさにはもっと鬱憤があるので「いけいけやっちゃえ!」しちゃう気持ちもわかる。
 大航海時代に片道旅行して遭難死した人間はいくらでもいるし、登山で亡くなる人は今でも後を断たないというのに宇宙飛行士に死ぬ権利が認められないのはどういうことなのか。税金を使っているからというのなら、なおさらコストアップをもたらすレベルの慎重さには疑問があったりする。
 マーズ・ダイレクト計画では3人チームだったはずだが4人になっている。「火星縦断」とのクロスオーバーして考えられる部分も多い。

ゆりかごから墓場まで
 2800万円を着て歩いていれば強盗にもあうか。しかし、あんな珍しいものをまともに換金できるとは思えない。発信機などをつけておけば奪還は不可能ではないはずだ。そのためには社会的に名声を稼いでおいた方がなにかと便利だな。
 インドの火星開発方法は人道的ではないがある意味、理想的だ。隕石着弾の時に暢気に高台から見物しようとしなければ被害を局限できたのだが、手順が確立していないところがいかにも冒険的開拓らしいとも言える。
 中国の衛星も活躍しているし、宇宙開発の中心が完全に今の先進国の手から落ちている様子。

大風呂敷と蜘蛛の糸
 おそろしく現実的な要求から行われた計画なのに、おそろしく夢のある話。地球の長い午後のクモを思い出した。水の電離によって大気から水素が逃げ続ける仕組みが確かにあるのだから、生物が逃げる仕組みがあってもよいかもしれない。
 高度80kmからの自由落下も無重力実験のために使ってしまえば、クジラの利用のように無駄がないだろう。
 実現してほしいなぁ、これ。

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沈黙のフライバイ (ハヤカワ文庫 JA ノ 3-9)
沈黙のフライバイ (ハヤカワ文庫 JA ノ 3-9)
野尻 抱介
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